障害のあるワーカーのためのより良いテレワーク 必要な6つのサポートとは
テレワーク環境で働く中で、障がいがある従業員の方が困難に感じることを整理し、基本的な対策6つをまとめた。
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Worker’s Resortではこれまでスタートアップから大手企業まで規模の異なる企業の従業員や、LGBTQなど、あらゆるワーカーに焦点を置いて働き方を取り上げてきた。今回は障がいのある社員の働き方に着目したい。
新型コロナに伴うテレワーク導入で数多くのワーカーの働き方に大きな変化が起きているが、もちろん障がいのあるワーカーも例外ではない。むしろテレワーク環境で働くにはまた特殊なサポートを必要とする彼らにケアが十分行き届いていない企業では、他の社員との間に「テレワーク格差」が生まれてしまうケースもある。そこで、障がいのある従業員がテレワーク環境下で抱える課題を解決するために、会社が実践すべき6つのポイントを紹介する。
障がいのある従業員といっても障がいの種類や程度は人それぞれだが、この記事では特定の障がいに絞ることなく、共通して配慮が必要とされる取り組みについて触れる。
テレワークは障がいのある従業員にとって働きやすい
まず在宅勤務・テレワークの導入は障がいのある社員にとって前向きな変化だという。彼らにとってオフィスに行くまでの通勤が身体的や精神的に大きな負担となることは多く、また出社してもオフィス環境が細部にいたるまで障がい者の生活を考慮して設計されているところは多くない。自宅で仕事ができることは多くの困難やストレスの回避につながるのである。
実際に発達障害を中心とした障がいのある人の就職支援を行う株式会社エンカレッジの代表取締役・窪貴志さんはコロナ問題が障害者雇用に与える影響として、同様の理由を挙げながら「会社全体としてリモートワークが当たり前になれば、障害者雇用においてもリモートワークが一気に進む可能性があります」と、従業員がより活躍できる機会が増えることに対する期待を自社メディアで述べている。
しかしその一方で、テレワーク環境下で配慮しなければならない問題も少なからず存在する。テレワーク導入時の具体的な問題点を挙げながら、その対策・改善方法を紹介していこう。
1. 1日のタスク・仕事スケジュールの作成
障がいのある人の中には新しい環境に困惑したり、決まったルーティンでないと不安を感じたりする人が多い。働く場所がオフィスから家へ、会社の人に囲まれた職場環境から1人の個人作業がメインの在宅環境に、口頭で確認できた内容もチャットやメールを通じた確認に移行、など在宅勤務制度の導入に伴う働き方の変化は激しく、さらに時短などを取り入れている会社では勤務時間さえも異なる。
この不安を取り除くには、会社に出勤し仕事するときと同じように、テレワーク環境下の新しいルーティンを持てるようにサポートすることが大切だ。そのために、1日のタスクや仕事スケジュールを細かく指示する必要がある。
このスケジュール表は筆者が作成した例だが、このように具体的なスケジュールを事前に組めることが理想的だ。ポイントは毎日のスケジュールの中で特定の業務や休憩の時間を固定している点。テレワーク勤務でもルーティン化を図るために朝礼の時間と1日業務報告時間を毎日同じ時間に設定したり、ランチ休憩はオフィス出勤時と同じ時間で取るようにしたりすると良い。
また新たな会議や業務が発生した場合は可能な限り前日までにスケジュールの変更の旨を伝えて、急な対応による混乱を避けるようにする。1日のスケジュール全体が変更になる場合は口頭で伝えるとともに、事前に作成したスケジュールも新しいスケジュール内容に変更して共有し直すことも重要である。
2. 分かりやすい業務依頼
テレワークを始めてから業務が効率よく進まなくなったという悩みを抱えるマネージャー層もいるかもしれない。実はその原因の1つとして業務依頼の仕方に問題があるケースが多い。もしそのような悩みがある方は「分かりやすい業務依頼」を意識してその伝え方を見直して欲しい。
例えば「この顧客ファイルをまとめて本日の終業前までに提出してください」と簡単に説明を済ましたり、または業務の内容を箇条書きで伝えたりしてはいないだろうか?その依頼方法だと不足している情報が多く、相手に業務内容の汲み取りを任せてしまっており、「結局のところ具体的に何をすればいいかわからない」と悩んでしまう従業員もいるのである。
誰に、どのようなファイルを、どのような形でまとめて、何時までに、どのような方法で提出するか説明することを意識する。先ほどの文章を言い換えると「新しい顧客名とアドレスをエクセルでまとめて、本日の18時までに担当者の〇〇さんにまでメールで提出すること」と詳細を含めた業務依頼をすることで従業員自身が行うべき業務を理解し、安心して行動に移すことができる。これにより業務を依頼した側もより正確なファイルを受け取ることができ、仕事の効率化にも繋がるのである。
3. 密なコミュニケーション
テレワークや在宅勤務の長期化で個人で作業する時間が多くなり、寂しさや自社への帰属意識が薄まるという問題が顕著になったが、障がいのあるワーカーはその不安を人一倍抱える傾向が強い。テレワーク業務を行うことに対して、閑職や単純作業に追いやり自主退職を促す行為としてテレワークを指示されたのではないかと排他的な感覚を感じやすいのである。
ここで重要とされるのが他の社員や上司との密なコミュニケーションだ。もともとオフィスで行われる口頭コミュニケーションは、障がいのある従業員にとって会話のスピードが早く、読唇が追いつかないなどの理由で輪に入りにくいと感じることが多かった。テレワーク環境下ではその不安をさらに煽ることにつながりかねないが、逆にこれを機にメールやチャットツールを活用した会話の見える化を実現できれば話は変わる。
特に日常の会話ができるように意識する場合は、メールではなくチャットツールを活用すると良い。口頭で行われていたコミュニケーションや何気ない会話はメールよりもチャットツールの方が移行しやすく、オフィスで働く社員・在宅する社員両方にとって参加しやすい。このようなカジュアルな会話は他の業務的な連絡と一緒に記録に残るため、障がいのある社員が話についていけない状況を減らすことができ、従業員同士のコミュニケーション活性化が図れるのだ。
またメンターをつけるのも1つの手だ。オフィスに居れば周りの従業員からの声がけや資料読み上げ、業務内容の丁寧な説明などのサポートが得られるが、テレワークではすぐに頼れる同僚が近くにいない。メンターはそんな環境でも頼れる役割を果たし、業務内容や会議での不明な点をすぐに相談できる存在となる。さらに人によっては体調や気分の波が大きく毎日の体調管理が必要となる障がいを持っている場合もあるが、メンター制度を取ることで会社側が従業員の小さな体調の変化にも気付くことが可能だ。