チームの機動力を高める「ハドルルーム」の活用事例
必要な時にすぐに集まり短時間でミーティングを行える「ハドルルーム」の仕様・運用事例を紹介する。
Facility
活発なコラボレーションを求め、よりイノベーションが生まれやすいオフィスするには単なる大きなオープンスペースを用意するだけでは十分ではない。今回は、ここ数年で多くの企業に導入されるようになった「ハドルルーム」を紹介する。
ハドルルームとは?
ハドルルームとは、基本的に2〜3人用、多くてもせいぜい6人程度収容できるミーティングルームのこと。俗に「小会議室」と呼ばれる部屋よりも小さく、社員が気軽にかつラフなミーティングを開くことのできるスペースとして利用されている。広々としたオープンプランのオフィスが多い中、騒音や雑音が気になるという社員の不満を解消する目的で導入されるケースが多いが、実はそれ以上の効果をもたらすものとしてより注目されている。
この「ハドル」とは、アメリカンフットボールで行われるプレーの作戦会議の名から由来している。今日のワークスペースではこのハドルのように、少人数単位で簡単に集まって話すシーンがよくみられる。
このハドルルームは5〜6人のチームで活発なコラボレーションを生みだすスペースとして、スタンフォード大学d.schoolでも積極的に利用されている。本校は昨今のイノベーションのキーワードとして耳にすることの多い「デザインシンキング」の本場であるが、オープンスペースを推奨する彼らも少人数チーム用のプライーベートルームの存在を大切にしている。
実際、彼らが2012年に出版した、イノベーティブなスペース作りを紹介する『Make Space』では「壁やドアを取っ払い、コミュニティ形成が目に見えるようにすることはコラボレーティブなスペースを作るのに大きな一歩である一方、壁やドアが与えてくれる安心感へのニーズがあることにも着目し、必要に応じてプライバシーを手にしやすい空間も提供している」と書かれている。
d.schoolのハドルルーム。学生が積極的に利用している。
ハドルルームの作り方
ハドルルームのコンセプト自体は新しいものではなく、今までオフィスの端にひっそりと存在していたような小さな部屋がここ数年で見直されたもの、と捉えて間違いないだろう。現在ではこの部屋をオフィス内で複数用意し、より人が集まる中央スペースに近いところに置く、というのが主流である。ハドルルームを作るには基本的に次の4つが必要になる。
- LCDやLEDのモニター
- 通常のホワイトボードか、インタラクティブな作業ができるデジタルホワイトボード
- スペース中央に置くテーブル
- イスやソファ
また、この部屋は予約制にしない、というルールも重要なポイントである。オープンスペースのオフィスで会話がいつでも自由に生まれるのと同様に、この部屋もその会話をより活発にさせるためにいつでも利用可能な状態にしておかなければならない。
小さな部屋に上に挙げた条件を整えるだけで、スペースとしての価値は大きく広がる。それでは実際にハドルルームがどのように活用されているか見てみよう。
ハドルルームの4つのメリット
多くの企業がハドルルームを取り入れる理由は主に次の4つである。
1. スピーディかつ活発な議論を促進
プロジェクト単位やチーム単位でのプライベート空間を提供できるため、チーム内で活発でスピード感のあるミーティングを行うことが可能。結果として、チーム単位での生産性向上も期待できる。
下の写真はサンフランシスコにあるPinterestのハドルルーム。適度なサイズなので、チームメンバー全員が積極的に会話に参加できる雰囲気を作りやすい。
2. 少人数かつプライバシー確保が必要なミーティングに最適
部屋に置かれたモニターを通じてオンラインのミーティングに参加することが可能。このハドルルームはそのような際にも丁度よい空間となる。遠方で行われるミーティングに1人だけオンラインで参加するのに、わざわざ大きなスペースを確保する必要はない。
2〜3人での使用を目的とするとさらに利用方法の可能性は広がる。実際にアメリカでは人事採用で候補者と面接を行う部屋としての利用されているほか、上司・部下間の面談もこのハドルルームで開くことが考えられる。
面接が行われている、Weeblyのサンフランシスコオフィス
Sanpfishオフィスのハドルルーム。一人で利用する社員も見受けられる。
3. チーム内のコミュニケーション量を増やす
上記にあるようにハドルルームは、数人のチームで気軽に集まったり相談したりできるように準備されているため、予約無しで利用できる場合が多い。利用者側も逐一必要以上に大きな会議室を抑える必要がないため、チームとして集まりやすくなり、結果的にチームのコミュニケーション量を増やすことにつながる。
下にあるAirbnb本社のハドルルームでは、カジュアルなミーティングができるようにリラックス感のある作りになっている。
Macys.comのオフィスでは実用的な部屋がいつでも利用可能だ。
4. オフィスの運用効率が向上
ハドルルームに必要なスペースは小さくて良いため、簡単に複数の部屋を用意することができ、それにより同時にいくつものコラボレーションを期待することができる。オフィスを拡張することなく、より多くの活発な議論を促進させることが可能なのである。
Campariのサンフランシスコオフィス。このように活発にミーティングを行う姿を見せることで他の社員への刺激にもなる。
このような小さなハドルルームは、オープンスペースが広く浸透した今だからこそあらためて見直されるものである。こちらの記事を元に、自社で実践されてみてはいかがだろうか。
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