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Airbnbが進める、オフィス拡張計画の中身

民泊サービス最大手として知られるAirbnbオフィスの本社拡張プロジェクトを紹介。都市型コーポレートキャンパス化を進めるその過程を探る。

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スタートアップがひしめく街、サンフランシスコにはユニークなオフィスが多く存在する。その中でもここ1年で特に大きな注目を浴びているのが、民泊サービスを中心に提供するAirbnbである。今回は彼らが2017年7月にオープンした、14,000ft²(約1,300m²)に及ぶ新社屋の中身をご紹介する。

注目するのは999 Brannanという場所にあるオフィス。その住所からわかる通り、1ブロック離れた888 Brannanに建つ本社ビルの拡張プロジェクトとしてデザインが施された。これは同社のオフィスを担当する環境チームが取り掛かる最大のプロジェクトで、サンフランシスコのオフィスデザイン事務所、WRNS Studioと行った。

新たなオフィスが必要となったAirbnbの急激な成長スピード

2008年8月の創業以降、Airbnbは10年足らずで192カ国65,000の都市にサービスを展開。昨年の投資ラウンドでも資金調達に成功し、その時の企業価値は310億ドル以上と多くのメディアで取り上げられた。企業価値の予測を行うTrefisは今年5月に同社価値を最低380億ドル以上としており、今も右肩上がりの様子だ。

そんなAirbnbは社員の約半数に当たる1,500人をサンフランシスコ本社に置いている。今回の新社屋である999 Brannanオフィスは800人から最大1,000人を収容できるスペースとなっており、同社は今後サンフランシスコの社員数を現在の2倍の3,000人にまで増やしていくとのこと。

この新社屋がオープンした翌月8月には、これまでソーシャルゲーム最大手のZynga本社だったオフィスビルを新たにリース契約した。99 Rhode Islandにあるオフィスも含めると、Airbnbは現時点で4つのオフィス、総面積で650,000ft²(約60,390m²、約18,270坪)ものスペースをサンフランシスコ市内で持つことになる。Airbnbオフィスは今まさに「都市型コーポレートキャンパス」形成の真っ只中にあり、今後も成長が窺える。

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すでに立派なAirbnb本社オフィス:888 Brannan

先日の記事でも紹介したように、888 BrannanにあるAirbnb本社は企業理念である「暮らすように旅しよう」を表現した特徴のあるオフィスデザインが有名である。下の写真のように、世界中にある掲載物件をイメージした空間づくりを徹底して行っている。このように実際にAirbnbのサービスを利用するユーザーと同じ環境を作ることで、社員に向けて常にユーザー視点に立ったサービス設計を行う姿勢作りを促しているのである。

関連記事:「オフィスでブランディング」に成功した企業5選

888 BrannanにあるAirbnb本社(写真はMark Mahaney)

本社拡張でAirbnbが見据えた3つのポイント

先に挙げたようにAirbnbの「都市キャンパス」化を進める上で通過点の1つとなる今回の999 Brannanオフィスだが、オフィスを拡大させていく上で同社が特に注意を払っていたポイントは次の3つだと見ている。

1. 立地は本社の近く

都市型コーポレートキャンパスを形成する上でオフィス間の距離を近くすることは尤もであるが、その背景に「社員の協業をより促すことができる」というポイントがあることは常に覚えておきたいところ。近年リモートワークを可能にするテクノロジーが増えていく中で、企業がオフィスに求める役割のうち、「社員同士の協業・コラボレーション」が以前にも増して大きくなりつつある。実際に今回の新社屋は本社から1ブロック離れた立地に存在し、新たに契約したZynga本社ビルもさらに1ブロック離れた地域に存在。オフィスが市内の1箇所に集中する様子は記事冒頭で紹介した地図にある通りだ。

今回の新社屋デザインに際し、Airbnbの環境チームは社員の提案や意見に積極的に耳を傾け、ブートキャンプスペースやヨガスペース、日本の禅をテーマとしたフィットネスセンター等、新たに必要とされたスペースをこの新社屋に導入した。キャンパス内にいる社員全員にこれらのサービスを提供し、全オフィスを通してワークスペースの機能を高めることができるのも、すべての社屋が徒歩圏に立地しているからならではである。

2. 1人あたりのデスクスペースは縮小

今回の新社屋では、1人あたりのデスクスペースが通常のオフィスよりも小さく、社員1人あたり220ft²(約20.4m²)から150ft²(約14m²)となっている。これは近年成長を見せるテクノロジー企業に共通して見られる特徴である。つい最近までは社員1人ひとりに幅広いスペースを提供するというのがオフィストレンドの主流であったが、サンフランシスコを中心に高騰を続ける賃貸料は、オフィス拡張を行いたい企業の1番の悩みのタネとなっている。Airbnb広報のMattie Zazueta氏は「オフィススペースの効率利用に最善を尽くしている」と語る。

ともなると、オフィススペースの密度が課題となりそうだが、この新社屋では建物の特徴であるガラスのフレームワークを上手に活用し、開放感のある空間作りに注力している。建物の特徴を活かしたデザインを施すのが西海岸デザインの特徴であるが、この新社屋はその好例の1つでもある。

999 BrannanにできたAirbnbオフィス。広々と見える空間設計が特徴的(写真はMariko Reed)

オフィススペースはビル全体で16の空間に分かれており、それぞれ50人ほど収容できるようになっている。各空間にはオーダーメイドのテーブルやスタンディングデスク、3つの通話ブース、そしてオープン/クローズ両方に対応可能なガレージ型ドアを備えた最大30人収容可能なミーティングルームを入れている。様々な働き方に対応できるスペースを用意しているのだ。

3. 全オフィス一貫した空間づくり

888 Brannanの本社オフィスの拡張計画として始まったこの999 Brannanオフィスだが、本社同様、各スペースは世界中にある建物空間の特徴を捉えた様相になっている。そのような統一感を複数のオフィスで持たせることが同社環境チームの仕事の1つだ。

日本の京都やアルゼンチンのブエノスアイレス、インドのジャイプルにオランダ・アムステルダムは実際にこの新社屋で取り入れられたテーマだ。その文化や色彩パターンが各フロアにあるカフェに反映されている。

また世界にある空間の再現を行うだけでなく、「社員のためのオフィス作り」や「企業ブランドの統一」を図るための取り組みも同チームは行っている。Employee Design Experience (EDX) というプログラムを通じて、実際に社員を最後のデザインタッチ作業に巻き込む。そうして、Airbnbという同社ブランドの一貫性を全オフィスで保つように、社員のアイデンテティが刷り込まれた空間作りを行っている。

写真はMariko Reed

実際に同社は2016年に宿泊場所だけでなく、旅行ツアーや体験を提供するサービスも始めていることから、社員がオフィス体験を向上させる取り組みに加わることはユーザー体験を大事にする同社にとって大きな意味を持つのだ。このような空間で、Airbnb社員は今日も顧客をイメージしたサービス設計に携わっている。

オフィス拡張?コーポレートキャンパス?それとも第2本社?

今回の999 Brannan新社屋はAirbnb本社の拡張案件として完成したが、同社が周辺物件の契約を結んでいることから、都市型コーポレートキャンパスを形成しつつあるのは記事冒頭で触れた通り。近年大企業になるほどオフィスに求める機能というのは個別化し、オプションは多岐にわたる。コーポレートキャンパスを都市部に作るか、それとも郊外に作るか、はたまた第2本社オフィスを建設するか。オフィスは今まで以上に企業の成長戦略と密接した存在になりつつある。

今後会社が成長するにつれて自分のところではどのようなオフィスを持つべきなのか?本ブログでは、今後も海外事例を取り上げていきたい。

<参考記事>
Exclusive: Airbnb debuts new San Francisco office
Airbnb US Headquarters Expansion – San Francisco
Airbnb Office – 999 Brannan / Airbnb Environments

この記事を書いた人:Kazumasa Ikoma

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