ワーカーの意識調査から読み解く、企業がテレワークを導入するメリット | WORK STAGE TREND2023
ニューノーマル時代の働く環境を表す新概念「ワークステージ」をキーワードに、未来の働き方やオフィスの環境づくりについて、さまざまな角度から提言を行っていく新連載。第1回では、独自調査をもとにテレワーク導入のメリットを考察する。
Culture
働く環境づくりの新概念「WORK STAGE」
「WORK STAGE(ワークステージ)」とは、Worker’s Resortを運営する株式会社フロンティアコンサルティングが提案する新たな概念で、これからの社会に必要となる働く場を意味する造語だ。
事務所や事業所などの物理的な「場所」に加え、教育や成長、コミュニケーションの「機会」をワーカーに提供し、一人ひとりが輝きながら働ける環境をイメージしてつくられた。これからの社会では、PLACE(場所)とOPPORTUNITY(機会)が融合した「ワークステージ」が求められるようになっていくに違いない。
そこで、本連載では今年1月に実施された「WORK STAGE TREND 2023」の内容をもとに、未来の働き方や働く環境づくりについて、さまざまな角度から提言を行っていく。
第1回となるこの記事では、独自に行ったアンケート調査を基に、テレワークに関するワーカーの意識を分析する。働き方の変化に伴い、テレワーク実施企業と非実施企業がそれぞれ経験するであろう課題をあぶり出し、「ニューノーマル」の時代に採るべき打ち手を考える一助としたい。
都市部を中心とするテレワーカーの急増
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大が始まり、それまでオフィスで顔を合わせて仕事をすることが一般的だったワーカーの働き方は、大きく制限されることになった。感染拡大を警戒しつつ、経済活動を再開してきた「Withコロナ」の時期を経て、現在は多くの企業が、ワークプレイスについてあらためて考える「Afterコロナ」のフェーズにいるのではないだろうか。デジタルコミュニケーションやテレワークが普及し、組織と個人の関係が多様化する中、独自のワークカルチャーを創造する「ニューノーマル」の戦略を練り始めている企業もあるだろう。
感染拡大が働き方にもたらした働き方の変革の中でも、今回は特にテレワークの普及に注目したい。感染拡大を防ぎながら経済活動を維持するため、テレワークを導入する企業が増加した。国土交通省が行った調査でも、全就業者における雇用型テレワーカーの割合が、2019年度の14.8%から2年間で27.0%に急増している。
画像は国土交通省「令和3年度 テレワーク人口動態調査」より
2022年12月、フロンティアコンサルティングは「働く環境に関する調査」を実施した。その結果、オフィスで働く正社員のテレワーク実施率は東京23区で51.7%、5大都市(東京23区、札幌市、名古屋市、大阪市、福岡市)以外の地域では18.6%となった。都市部では、オフィスで働く正社員の半数以上がテレワークを取り入れているという結果だ。
テレワーク実施者と非実施者で、意識に大きなギャップが
都市部を中心にテレワークが普及する中、テレワークを活用しているテレワーカーと、活用していないノンテレワーカー(※1)の間に「意識のギャップ」が生まれつつある。
前述の調査で「今後の生活にテレワークは欠かせないと思いますか?」という質問をしたところ、約90%のテレワーカーが、今後の生活にテレワークが「欠かせない・やや欠かせない」と回答している。一方、同様の回答をしたノンテレワーカーは約33%にとどまった。
また、「3年前と比較して、現在はテレワークに慣れたと思いますか?」という設問に対し、約96%のテレワーカーが、3年前と比較して現在はテレワークに「慣れたと思う・やや慣れたと思う」と回答。他方、同様の回答をしたノンテレワーカーは約71%だった。
これらのデータからは、現在テレワークを活用しているワーカーにとって、自宅やカフェなどでの勤務が欠かせない選択肢になりつつあることが読みとれる。一方、ノンテレワーカーにとって、テレワークは働く上での必須条件ではない。2020年以降の3年間、どんな働き方をしてきたかによって、生活の中にどれくらいテレワークが溶け込んでいるかという「存在感」や、テレワークへの「慣れ」の度合いに大きな差が生まれていると言えそうだ。
働き方の自由度の鍵を握る「テレワークの可否」
続いて、テレワーカーとノンテレワーカーの「働き方の自由度」に対する意識の差を見てみよう。
「自身の『働く場所や時間』の自由度は高いと思いますか?」という質問に対し、テレワーカーの約77%が自由度が「高いと思う・やや高いと思う」と回答したのに対し、同じ回答をしたノンテレワーカーは約25%だった。自身の働き方を自由だと感じる上で、「テレワークを選択できるかどうか」が大きな要因になっていることが読みとれる。
「今後に向けて、『働く場所や時間』の自由度をもっと上げたいと思いますか?」という問いに対しては、テレワーカーの約83%が、「上げたいと思う・やや上げたいと思う」と回答。同じ回答をしたノンテレワーカーの割合は約61%となった。
将来に向けて働き方の自由度を高めたいという意向は、テレワーカー、ノンテレワーカーの区別を問わず、多くの人が持っているようだ。
働き方の自由度を高めることは、ストレスや不安の解消につながるのか
どんな働き方をしていても、仕事をする上で、ストレスや不安を感じることはあるだろう。
「現在働くなかでストレスや不安を抱えていますか?」という設問に対し、テレワーカー、ノンテレワーカー共に6割を超える人が、現在働く中でストレスや不安を「抱えている・やや抱えている」と回答した。
「ストレスや不安が仕事の生産性に影響すると思いますか?」という質問には、テレワーカー、ノンテレワーカーを問わず8割前後の人が、ストレスや不安が生産性に「影響すると思う・やや影響すると思う」と回答している。働く中で生じるストレスや不安をどう解消するかが、業務の生産性を上げる上でも重要であることがうかがえる。
働き方の自由度は、ストレスや不安の解消にどんな影響を与えるのだろうか。「『働く場所や時間』の自由度が上がることで、ストレスや不安の解消につながると思いますか?」とたずねたところ、ストレスや不安の解消につながると回答したのはテレワーカーで約79%、ノンテレワーカーで約66%という結果だった。
6〜8割のワーカーが、働き方の自由度を高めることでストレスや不安も軽減すると考えていることがわかる。
自由な働き方を取り入れることで、優秀な人材から選ばれる企業に
調査の結果から、多くのワーカーが働き方の自由度を高めたいと望んでおり、自身の働き方を自由であると感じる度合いはテレワークができるかどうかに左右されることがわかった。
以上のことを踏まえると、ワーカーがテレワークを導入していない企業に転職する可能性は、コロナ禍以前に比べ低下していると考えられる。2021年にパーソルキャリア株式会社が実施した調査でも、転職先を検討する際、「テレワークを実施している」「今の会社よりもテレワークの制度・環境が充実している」ことが重要と回答した人は全体の半数超にのぼった。
現在テレワークを実施していない企業にとっては、優秀な人材を採用し、自社で働き続けてもらうために、働き方の自由度を向上させる取り組みが避けられない状況になっていると言えるだろう。
すでにテレワークを実施している企業も、制度を設けるだけでは不十分だ。実際、現在テレワークを活用しているワーカーの多くが「働く場所や時間の自由度をさらに上げたい」と考えている。最先端のデジタルツールの導入、働き方の自由度を高めるための環境開発など、取り組むべき課題は多い。
本連載の第2回以降では、現在テレワークを実施している企業が、どのような観点で「ワークステージ」を構築していくべきか、最新のトレンドを踏まえ考察していく。