コーヒーブレイクで生産性アップ!海外オフィスのカフェスペースを紹介
コーヒーはビジネスシーンに欠かせない飲み物だが、生産性向上やコミュニケーション促進のツールとして「コーヒーブレイク」の価値が見直されている。コーヒーの効能や海外オフィスのカフェスペース導入事例を紹介する。
Culture
オフィスに期待される対面コミュニケーション
コロナ禍を経て、「対面で集まること」の価値を実感した人も多いのではないだろうか。リモートワークには多くのメリットがあるが、物理的な距離が生まれたことで、従業員同士の対面コミュニケーションの機会は減少した。オフィスに対しても、コミュニケーションやクリエイティビティの創出にその価値を見出す企業が増えている。
そんななか、注目されているのが「コーヒーブレイク」の時間だ。実際に、海外ではオフィス内にコーヒーカウンターやカフェスペースを設置する企業が増加している。そこで今回は、コーヒーと生産性の関係やオフィスにカフェスペースを設けることの利点について解説し、海外のオフィスのカフェスペースを紹介したい。
コーヒーブレイクで生産性が向上?
そもそも、コーヒーがビジネスシーンに欠かせない存在となっているのはなぜだろうか。「コーヒーを淹れる」という行為が仕事の一区切りをつけやすいという側面もあるが、それだけではない。
オランダのコーヒーサプライヤー「Kaldi Koffie & Thee」が行ったアンケート調査によると、1400人を超える回答者のうち57%が「コーヒーを1杯飲んだ後は生産性が向上した」と回答していた。これは金融機関で働く人に顕著で、金融機関に勤務する人では75%がコーヒーによって生産性が向上すると回答した。
同様に、コーヒーの摂取によって作業成績が向上することを示した日本の研究報告もある。同報告ではその理由として、コーヒーに含まれるカフェインの効果により課題への集中力が増し、作業成績が上昇したのではないかと考察している。
また、この研究では、ストレス負荷によって引き起こされるポジティブな気分の低下をコーヒーを飲むことで抑制できる可能性についても指摘している。前述のKaldi Koffie & Theeのアンケートでも、「コーヒーを飲むとリラックスできる」と70%の人が回答しており、コーヒーが気分の改善につながることがわかる。
短時間のコーヒーブレイクでリラックス効果が得られ、作業成績が向上するなら、働く人にとっても企業にとってもメリットのあるひとときといえるだろう。
カフェスペースが偶発的な会話を生む
コーヒーブレイクで重要になるのが、「どこでコーヒーを楽しむか」である。給湯室から自席にすぐ戻ってしまうのでは、コミュニケーションの創出にはつながらない。従業員間の会話が生まれやすくなるよう、コーヒーやお茶を飲みながら少しの時間滞在できるカフェスペースを社内につくることが有用だ。
カフェスペースでは、個々がコーヒーを淹れるタイミングで偶然出会った人との気軽な雑談が生まれる。コーヒーのリラックス効果の助けを借り、普段はあまり気軽に話せない上司や他部署の人とも自然な会話が楽しめるかもしれない。
自然と生まれるコミュニケーションがチームビルディングの一助となり、生産性向上のみならず、イノベーションやクリエイティビティの創出につながることも期待できる。
カフェスペースを備えた世界のオフィスを紹介
ここからは、実際にオフィス内にカフェスペースを導入した世界のオフィスを紹介したい。
1. CIRCL(オランダ/アムステルダム)
オランダの3大メガバンクのひとつであるABN AMROが所有する複合施設「CIRCL」。館内には一般客が利用できるレストランやバーもあるが、こちらは会議室フロアの一角に設けられた、スタッフ用のコーヒーカウンターの様子だ。
地下1階の会議室フロアにあるカフェコーナー(画像は著者撮影 ⒸNaoko Kurata)
筆者が通りかかった際も会議のコーヒーブレイクと思われるグループがひとしきり談笑し、会議室に戻っていった。そのなごやかな雰囲気から、以後の会議もスムーズに進行し活発な議論が展開されることがうかがえた。
2. GitHub, Inc. サンフランシスコ本部(アメリカ/サンフランシスコ)
ソフトウェア開発のプラットフォームを提供するGitHub, Inc.のサンフランシスコ本部には、「Cafe Mona Lisa」というカフェコーナーがある。ここは同じくサンフランシスコに店舗を構えるコーヒー焙煎所兼カフェの「Wrecking Ball」が運営に携わっている。
平日の午前8時から午後3時までWrecking Ballのバリスタが常駐しており、GitHub社員は無料でコーヒーを楽しめるという。コーヒーメディア「SPRUDGE」の記事によると、GitHub, Inc.のオフィス運営マネージャーは、Cafe Mona Lisaが「オフィスの1階に新鮮なエネルギーをもたらし、仕事をする場所を増やし、社員同士の偶発的な出会いの機会を増やした」と語っている。
3. AOKハンブルク支店(ドイツ/ハンブルク)
コーヒーブレイクがもたらすプラスの効果を社外の人ともシェアしているケースもある。ドイツの保険会社AOKのハンブルク支店は、スタッフのみならず顧客である被保険者も利用できる「Coffeepoint」をオープンした。
スタッフのみならず顧客とも友好な関係が築ける(画像は建築デザイン会社kplus konzept GmbHのWebサイトより)
コーヒーやお茶を飲みながらの気軽なコミュニケーションはもちろん、被保険者にアドバイスをする際もリラックスした雰囲気の中で行える。オフィスでイベントを開催する際には、ドリンクバーとして活躍しているという。外にも開かれた、従業員とゲストのためのソーシャルホットスポットとなっている。
4. LinkedInサンフランシスコオフィス(アメリカ/サンフランシスコ)
ビジネス特化型SNS LinkedInのサンフランシスコオフィスには、地元のコーヒーメーカー「Equator Coffees」と提携したカフェスペースがある。
広いエントランスホールの一角にコーヒーコーナーがある(画像はEquator CoffeesのFacebookより)
社員のほうも一般客もカフェを利用している(画像はEquator CoffeesのInstagramより)
このカフェスペースは、一般にも開放されており、若者がおしゃべりに興じたりパソコン作業に没頭したりする姿が見られる。スタイリッシュで居心地の良い空間として地元でも有名なスポットとなっているのだ。
広いスペースを活用し、朝ヨガなどのイベントも開催されている。「ここに来れば何かがある」という期待を抱かせる、企業イメージの向上にも貢献するカフェスペースだ。
クリエイティビティやコミュニケーションを活性化するひと工夫を
実際に、オフィスにカフェスペースを導入する際には、ただスペースをつくるだけではなく、コミュニケーションの促進やクリエイティビティの創出につながるような工夫をするとより意義のある場となるだろう。
オランダのリサーチ会社PanelWizardの調査によると、オフィスのカフェスペースにおける会話の33.3%が「仕事関連の話題」であり、「仕事以外のトピック」の31.3%をやや上回っていた。この簡易ブレストともいえるカフェスペースでの会話から生まれたアイデアやインスピレーションを、その場限りで流してしまうのはもったいない。
思いついた内容を書き留めておけるよう、ホワイトボードや付箋を用意しておけば、その後の業務に生かすこともできる。それほどかしこまらずに自由な落書きボードとして活用しても、会話や発想のタネになるかもしれない。
また、ダーツや卓球台などのレクリエーション用品を置いておけば、デスクワークでかたまった体をほぐすリフレッシュの時間にもなる。遊びの要素が加わることで、他部署の人ともよりコミュニケーションがとりやすくなるだろう。
カフェスペースは使い方によっては大きな可能性を秘めている。ぜひ自社ならではの活用法を見つけてほしい。