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パーティションを使わない、海外オフィスのフレキシブルなゾーニング手法を紹介!

オフィスにフレキシブルさが求められる昨今、従来型のパーティションを用いない新たなゾーニング手法へのニーズが高まっている。ユニークなゾーニングを採用した海外企業の事例を取り上げ、ゾーニングに活用できるオフィス家具についても紹介する。

働き方の変化で注目される新たなゾーニング手法

近年、働き方が多様化し、目的に合わせたオフィスレイアウトが重視される傾向にある。これに伴い、従来型のパーティションだけではない、新しいゾーニング手法が注目されている。
この記事では、オフィス空間のゾーニング手法に焦点を当て、ユニークなゾーニングを採用した海外企業の事例を取り上げる。また、ゾーニングに活用できるオフィス家具についても紹介したい。

パーティションを使わないゾーニングのアイデア

従来型の背の高いパーティションは、プライバシーを保護する点では有用だが、フレキシブルな活用には不向きといえるだろう。では、フレキシブルなワークプレイスには、どのようなゾーニング手法が適しているのだろうか。以下にそのアイデアを紹介する。

・エリアをカラーで区分けする
特定の色でエリアを区別し、視覚的なゾーニングを行う方法。目的や用途によって、オフィスの壁や床の色を変えることで、エリアの境界を瞬間的に認識できる。

・可動家具を活用する
移動が容易な自立式のパーティションやスクリーン、ユニット式の家具を活用したゾーニング方法。オフィス内のレイアウト変更がしやすく、アジャイルなオフィスに適している。

・使用する設備を転用する
そのエリアで使用する設備をパーティションとしても活用するゾーニング方法。共創エリアではホワイトボード、集中エリアではワークブースというように、そのエリアで必要な設備をパーティション代わりに利用すると無駄がない。

ユニークなゾーニングを採用した海外オフィス事例

海外では、柔軟な働き方に適応したユニークなゾーニング手法を取り入れている企業がみられる。以下に、そのオフィスデザイン事例を紹介したい。

1. Miro アムステルダムオフィス(オランダ)

オンラインホワイトボードツールを提供するMiroは2021年、アムステルダムに新しいオフィスを開設した。この新社屋には、天井から吊るしたカーテンで囲まれた円形の空間がある。この特別な空間は、気軽なコラボレーションスペースや、臨時のミーティングスペースとして多目的に利用されている。

画像はデザインを手掛けたM Moser AssociatesのWebサイトより

薄く透けるカーテンを使用することで、閉塞感や圧迫感が軽減される。また、内外からの視認性が高く、利用状況も一目瞭然だ。カーテンをフルオープンにすれば、オープンエリアと一体化するため、空間の有効活用にも貢献してくれる。

ほどよいリラックスムードが漂う大型植物によるゾーニング(画像はデザインを手掛けたM Moser AssociatesのWebサイトより)

 

同社では他に、植物を活用したゾーニングも行っている。通路と休憩スペースの間に設置された大型植物が、パーティションの役割を果たすとともに、リラックス感を演出している。植物の隙間から通路の様子がうかがえるため、仲間が通りかかれば気軽に声をかけ合うこともできる。ゆるいゾーニングによって、コミュニケーションを遮断しない環境を実現した一例といえるだろう。

2. Endress+Hauser マールブルクオフィス(ドイツ)

計測機器の設計開発を行うEndress+Hauser(エンドレスハウザー)​​は、2020年にドイツのマールブルクにオフィスを新設した。この新社屋はグループ最大の拠点のひとつであり、約2000人の従業員が働いている。
なかでも若手の育成に注力する同社では、若手社員の要望を反映し、この新社屋に「コミュニケーションゾーン」、「グループワークエリア」、研修中の交流を促進する「マーケットプレイス」など多彩なスペースを用意した。

画像はインテリアデザインを手掛けたVitraのWebサイトより

従業員が自由に集い、会話を楽しむことができる「コミュニケーションゾーン」では、床面の段差を活用したゾーニングが導入されている。わずかな段差を設けることで、通路との境界を明確にしながらも、通路を行き交う人とのコミュニケーションを妨げないデザインとなっている。


画像はインテリアデザインを手掛けたVitraのWebサイトより

また、集中作業用に一人掛けのソファも用意されている。このソファは、背面と側面がパーティションのように高くデザインされているところが特徴だ。配置の仕方によって、ソファ自体がゾーニングの役割を担ってくれる。

3. Interface本社(アメリカ)

モジュラー式の床材を製造・販売するInterfaceは、アメリカ・ジョージア州のアトランタに本社を置いている。1960年代の古いビルを改装したその本社は、従業員に「ベースキャンプ」と呼ばれ親しまれている。
同社はこのベースキャンプを健康的かつ前向きで生産的な職場とすべく、従業員の移動を促す階段やアクセスしやすい屋上スペース、ウェルネスルーム、瞑想ルーム、コラボレーションスペースなど多彩な空間を設けた。

画像は建築設計を手がけたPerkins&WillのWebサイトより

また、自社のプロダクトである床材を活用し、ショールームの役割を果たしているのも同オフィスの特徴だ。ビニールタイルやフローリングにカーペットタイルを組み合わせ、素材の変化で場の雰囲気を変えることによりゾーニングを行っている。

画像は建築設計を手がけたPerkins&WillのWebサイトより

一方、屋外テラスに面したオープンエリアでは、床材の変化に加えて、階段の高低差も生かしたゾーニングがみられる。興味深いことに、同じエリアにありながら、階段上部のエリアはテラスから光が注ぐ明るく開放的な空間、階段下部のエリアは少し落ち着きのある空間といった印象を受ける。ひとつの空間で異なる雰囲気を巧みに演出するゾーニング手法として参考にしたい。

ゾーニングに活用できるユニークなオフィス家具

オフィス空間のゾーニングを行う際、フレキシブルさを求めるならば、可動式やユニット式のオフィス家具の活用をおすすめしたい。以下、ゾーニングに役立つユニークなオフィス家具を紹介する。

1. Steelcase社のオーバーヘッドテント

テントと聞くと、キャンプ用のものがイメージされるが、Steelcase社の「オーバーヘッドテント」は、ワークスペースでの使用を想定した製品である。オープンスペースにこのテントを組み立てると、新しい空間を創出できる。また、テントのやわらかな曲線のフォルムが、オフィスに開放的な雰囲気を演出してくれる。

画像はSteelcase社のWebサイトより

テントのフレーム素材には、軽量アルミとプラスチックが採用されており、フレームを支えるベースの位置を動かすことで、テントの高さや幅を調整できる。同じフロア内なら、移動も比較的容易だ。少人数でのコラボレーション作業に適した広さがあり、休憩用のラウンジやカジュアルな会議室として利用できる。一人サイズのPodテントも組み合わせれば、さらに多目的に活用できそうだ。

2. Haworth社のパーゴラ ワークプレイス

Haworth社の「パーゴラ ワークプレイス」は、ユニット式の大型オフィス家具だ。組み立てに特殊な工具を必要とせず、オフィスに設置するだけでゾーニングの役割を果たしてくれる。基本ユニットにカーテンやボードを自由に組み合わせて、機能を追加することも可能だ。

画像はHaworthのWebサイトより

ユニットのベースは、直線と曲線を組み合わせたシンプルな形状で、どんなスタイルのオフィスにもなじみやすい。一般的に、天井のある空間は閉塞感が出やすいものだが、このユニット家具はスリットが特徴的なパーゴラデザインであるため、すっきりと開放的な印象を受ける。複数のカラーバリエーションがあり、どの色を選択するかによって、オフィスの印象が大きく変わりそうだ。

このように、オフィス家具をうまく利用すれば、広いオフィスのゾーニングも比較的容易に行える。会議、コラボレーション、集中作業といった目的に合わせて、組み合わせを考えるとよいだろう。

ゾーニングのアイデアで柔軟なワークプレイスを実現しよう

オフィス空間のゾーニング手法は、もはや固定式のパーティションだけではない。フレキシブルな働き方に対応して、レイアウトやデザインを工夫したり、ゾーニングにも活用できるオフィス家具を導入するなどして、自由度の高いプランを検討してみてはいかがだろうか。

Kaori Isogawa