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働き方の多様化に向け、オフィスに求められるコミュニケーション機能のさらなる拡張 | WORK STAGE TREND2023

ニューノーマル時代の働く環境を表す新概念「ワークステージ」をキーワードに、未来の働き方やオフィスの環境づくりについて提言を行う連載企画。第2回は、オフィスに求められる、コミュニケーション機能のさらなる拡張について考察する。

テレワークの普及にともなう、オフィスの役割の変化

新型コロナウイルスの感染拡大が始まる以前、オフィスは「作業をおこなう場」として役割を担っていた。しかし2020年以降、感染拡大を防ぎながら事業を維持するため、テレワークを導入する企業が急増したことは、本連載の第1回で解説した通りだ。

こうした働き方の変化によってワーカーのコミュニケーションのあり方が変化する中、オフィスが担う役割も変わろうとしている。

未来の働き方や働く環境づくりについて考える連載企画「WORK STAGE TREND」。第2回では、前回に続き独自に行ったアンケート調査の結果を紹介しながら、これからのオフィスに求められる機能の変化について考えていきたい。

テレワーカーは、オンラインコミュニケーションに慣れつつある

この3年間で、ワーカーのコミュニケーションはどのように変化したのだろうか。2022年4月に、フロンティアコンサルティングが行ったアンケート調査の結果から見ていきたい。

「3年前(コロナ禍以前)と比較して、現在はWEBミーティングやチャット・メールを用いたオンラインのコミュニケーションに慣れたと思いますか?」という質問に対し、テレワーカーの93.1%がオンラインのコミュニケーションに「慣れたと思う・やや慣れたと思う」と回答している。

ある日突然オフィスに出社できなくなるという状況の中、慣れないWEBミーティングアプリやチャットツールに戸惑い、コミュニケーションのとりにくさを感じたワーカーも多かっただろう。3年の月日が流れ、テレワーカーにとっては、オンラインでのコミュニケーションが日常となりつつあることがうかがえる。

また、「WEBミーティングやチャット・メールを用いたオンラインのコミュニケーションを、今後もっと活用していきたいと思いますか?」と質問したところ、テレワーカーの92.5%がオンラインのコミュニケーションを今後もっと「活用していきたいと思う・やや活用していきたいと思う」と答えた。

日々の仕事にWEBミーティングやチャット・メールを取り入れているテレワーカーの9割以上が、オンラインでのコミュニケーションをさらに活用したいと考えている。コミュニケーションを円滑にするためのデジタルツールが次々に登場する中、既にテレワークを導入している企業も、オフィス環境を常に見直し、アップデートする必要がありそうだ。

進むワーカーの多様化〜場所と時間の広がりから、雇用形態の広がりへ

テレワークの導入により、ワーカーの働く場所と時間の自由度が高まった。9時から17時など、決められた時間オフィスに滞在して働くことが一般的だった時代から、働く場所と時間を選ばない時代へと働き方は変化している。

それに加えて近年では「副業・複業」や「個人事業主(フリーランス)」など、正社員以外の働き方についても、ワーカーの関心が高まっている。

前述の調査でも、「あなたが行ってみたい働き方、もしくは既に実践されている働き方に関して、最も近いものを選択してください」という質問に対し、テレワーカーの過半数を超える57.1%が副業・複業や個人事業主などに興味を持っている、または実行していると回答
している。

また、2021年にランサーズ株式会社が実施した調査でも、2021年以降、副業や個人事業主として収入を得たフリーランスが急増している。2015年と比較して人口は640万人増、経済規模にして9.2兆円増と、コロナの流行をきっかけに、正規雇用にとらわれない働き方が広がっていることが明らかだ。

副業・兼業に対する企業の意識変革

副業・兼業人材に対する企業側の意識も変化している。2022年に経団連が行った調査によると、常用労働者数が5000人以上の企業のうち、副業・兼業人材を社外に送り出すことを「認めている」または「認める予定」と回答した企業は83.9%にのぼり、2019年の46.0%から急増している。

画像は一般社団法人 日本経済団体連合会『副業・兼業に関するアンケート調査結果』より

また、常用労働者数が300人未満の企業のうち、 副業・兼業人材を社外から受け入れることを「認めている」または「認める予定」と回答した企業は37.7%と、2019年の13.3%からおよそ4倍近い伸びを見せている。

画像は一般社団法人 日本経済団体連合会『副業・兼業に関するアンケート調査結果』より

2019年以前から始まっていた働き方の変化がコロナの感染拡大により加速し、働く場所や時間のみならず雇用形態も多様化しつつあるのが、2023年現在の状況と言えそうだ。

求められるのは、エンゲージメントを高めるコミュニケーション

コロナ禍以前、オフィスは「正社員が集まって業務を進めるための場所」であり、オフィス内で発生するコミュニケーションも「社員同士」「社員と顧客」というような、わかりやすい構図がほとんどだった。

しかし、働く場所と時間、さらには雇用形態が急速に多様化した現代において、オフィスには正社員のみならず、さまざまな雇用形態、関わり方のメンバーが存在する。企業に対するコミットメントの度合いやエンゲージメント(意欲や信頼、貢献意欲)の高さ、熱量も人によりさまざまだ。

自社に関わる人々のエンゲージメントを高め、維持することは生産性の向上にもつながり、企業にとって事業の成否を分ける重要な要素となる。近年では、従業員エンゲージメント調査を行う企業も増えている。

エンゲージメントを高めるための施策はいくつかあるが、中でも有効なのは社内で行われるコミュニケーションを活発化することだ。業務上必要な情報を伝達するだけでなく、ビジョンを共有したり、お互いへの理解を深めたりするための会話により、組織に関わる人々の帰属意識が高まり、コミュニティが形成される。これからのオフィスには、より本質的なコミュニケーションを増やし、コミュニティを育ててエンゲージメントを高める役割が期待されることになるだろう。

コミュニティを育てる場としての、オフィスのあり方

一方、場所や時間を共有することが少なくなった組織においては、何らかの対策を講じなければ、偶発的な会話の機会が減り、コミュニケーションが減少してしまう。

2021年にリクルートワークス研究所が行った調査では、2020年3月以前に比べ、2020年4月以降コミュニケーションの総量が減ったと回答した人は、オフィスワーカーの37.6%にのぼる。また、コミュニケーションの満足度についても全体の29.2%、およそ3割が以前に比べ「下がった」「やや下がった」と回答している。

良質なコミュニケーションを促進し、エンゲージメントを高めるオフィスを、企業はどう実現していけばよいのだろうか。

本連載の第3回では、「コミュニケーションの場」として機能拡張が求められるオフィスに必要となる、「ファンスペース」や「オンラインコミュニティ」の具体例を紹介する。