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体験レポート | 東京の離島・大島がワーケーションに”いい”理由

交通アクセスが良く、自然豊かで魅力にあふれる大島で1泊2日のワーケーションを行った。その体験記を、良かった点と次回に活かしたい課題に分けて紹介する。

東京の離島・大島でワーケーション

東京都にある離島・大島。東京都の11の島のなかでは一番本州に近く、ジェット船で熱海港から45分、東京・竹芝桟橋から1時間45分という立地にある。海はもちろん、木々の生い茂る山や荒々しい火山、砂漠などがあり、非常に自然豊かな場所である。

そんな大島に地域文化の理解を深めることを目的として、1泊2日でワーケーションで訪れた。その体験記をお届けする。

大島で行ったワーケーションのスケジュール

1日目は公共施設の視察や地域住民の方によるレクチャーなどを交えながら、通常業務を行った。

【1日目】
9:10~9:55  熱海港から大島へ、ジェット船で移動
10:30~12:00 公共施設の視察
12:00~13:00 昼食
13:00~15:00 大島を散策
15:00~16:30 地域の文化についてのレクチャー
16:30~18:30 ゲストハウス「青とサイダー」にて仕事
18:30~21:00 郷土料理や地場食材を使ったバーベキュー

カルデラが特徴的な活火山、三原山。裏面には砂漠が広がっている。
15,000年前の地層切断面は「バームクーヘン」の愛称で島民に親しまれている。
中央にある岩のような島「筆島」。数十万年前に出来た地形が、長い年月をかけて荒波に削られ今の形に。

2日目はゲストハウスとシェアハウスで業務を行い、帰路についた。

【2日目】
9:00~12:00 ゲストハウス「青とサイダー」にて仕事
12:00~13:30 昼食
13:30~16:00 シェアハウス「クエストハウス」にて仕事
16:30~18:15 大島から東京・竹芝桟橋へ、ジェット船で移動

宿泊したゲストハウス「青とサイダー」は、アートと自転車をテーマにしている。(画像は「青とサイダー」のWebサイトより)
シェアハウス「クエストハウス」には、外を眺めながら仕事ができるデスクも。(画像は「クエストハウス」のWebサイトより)

以下に大島でのワーケーションの良かった点と課題を列挙する。

大島でのワーケーション 良かった点

体験を終えて感じた良かった点として次の4点を挙げる。

1・新しい文化との出会いがある

豊かな自然や古くから親しまれている郷土料理など、その土地に行かなければ出会うことのない様々な文化と触れ合うことができるのが最大の魅力だ。メジャーな観光地でない限り地方へ訪れることはなかなか無いが、ワーケーションを通してその土地にしかない魅力の再発見につながる。日本は地域ごとに異なる固有の文化や特色が多数あるので、ワーケーションを活性化するポテンシャルはかなり高いのではないか、と感じている。

2・学びや人の輪を広げるきっかけになる

地域の方からのレクチャーでは、大島や他の離島の現状について、お話いただいた。実際に住んでいる方の目線で語られる事実はとてもリアルで、今後自分が地域貢献をしていくためには何ができるのか、ということを考える大切な機会となった。ワーケーションはただのイベントではなく、新たな学びや人の輪を広げていくためのきっかけになり得るのではないだろうか。

3・同僚との親睦が深まる

今回のワーケーションを通して同僚との親睦が深まり、チームワークの醸成につながった。自然の中で同僚と語らうと不思議と落ち着き、どことなく空気が一体となったように感じた。

夜は同僚と語り合いながら、郷土料理や地場食材を使ったバーベキューを楽しんだ。

関係性の構築には体験の共有が鍵になる。ワーケーションはプログラム次第で、チームビルディングに対してかなり高い効果を発揮するのではないかと考えられる。

4・オフィスがあることの価値を再認識できる

常に静かで穏やかだったので、周囲の騒音や人の気配などに気を取られず集中して仕事に取り組めた。反面、相談をしたいときに気軽に声をかけることができたり、隣に座った人との会話から着想を得たりなど、オフィスで働くことの良さも感じられた。オフィスかワーケーションのどちらか一方に偏らず、流動的に選択できる環境を整えていくことが望ましい。

大島でのワーケーション 課題点

体験を通して感じた、今後検討するべき課題として次の3点を挙げる。

1・目的の設定

ワーケーションは働き方を広げるツールのひとつであり、それ自体が目的となってはさほど意義がない。どのような課題解決あるいは付加価値の創出を目指すか、ワーケーションを通して何を得たいのか、という点を明確にしておくことが重要だ。

2・滞在期間・プログラムの検討が必要

ワーケーションを単なるイベント化しないためには、適切なプログラムや滞在期間の検討が必要だ。例えば個人のウェルビーイング向上とチームビルディングでは効果的なプログラムが全く異なる。加えて、滞在期間が短すぎると移動に時間を取られ疲労がたまるし、長すぎるとワーケーションの醍醐味である非日常感が薄れていってしまう。

近年では、ワーケーションに力を入れている自治体やサービス提供企業、専門のコーディネーター等も増えているので、次回はそういった支援を活用しながら自分たちに合った内容を選択したい。

3・効果を定量的に示すのが難しい

ワーケーションの良さを数字やデータで示すのは難しく、人にすすめるときはどうしても主観的な意見になってしまいがちだ。デジタルデバイスを用いた定量的な効果測定も一部で行われているが、調査数はまだまだ少なく、エビデンスと断言できるまでのデータはそろっていないように思われる。

良さを伝える前段階として、ワーケーションは一般的に思われているよりもかなり広義で、様々な可能性を秘めているという認識を浸透させていくことが、周囲の理解への第一歩だ。

ワークスタイルを越えて「ライフスタイル」に

ワーケーションは過渡期を迎え、今後も更なる分岐や進化が続いていくと予想される。私たちが今できることは、達成したい目的やゴールをイメージし、自分にあった働き方を選んでいくことだ。

ワーケーションの効果や価値だけに目を向けるのではなく、それによって私たちの暮らしがどのように変化していくのかということも合わせて考えるのが重要である。「働く」というだけではなく、地域や社会に作用したり、文化を学んだり、社会問題に貢献したり、色々な形のWorkがある。そしてそれらはワークスタイルを越えて、新たなライフスタイルを形成していくのではないだろうか。

この記事を書いた人:Manami Sakakibara