従業員のモチベーションアップ! テレワーク時代の運動不足解消法
テレワークで運動不足を感じる人が増え、対策に乗り出す企業も出てきた。ここでは、従業員の運動不足解消に取り組む企業の事例と、企業を対象とした運動支援サービスを紹介する。
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テレワークで運動不足を感じる人が増加
コロナ禍でテレワークが急速に進み、外出自粛が重なったこともあり、ワーカーの運動不足が深刻化している。
RIZAP株式会社が2021年6月、企業の健康管理担当者167人を対象に実施した「テレワーク中の従業員の不調と対策アンケート」によると、テレワーク実施企業では82.1%がテレワークの普及によって従業員の「健康面に変化あり」と回答している。具体的には、「運動不足を実感している」が78.6%と最も多く、次いで「メンタル不調者が増えている」(22.1%)となった。
また、紀尾井町戦略研究所が2021年4月、18歳以上の男女1000人を対象に行った「<Web調査>1,000人に聞いてみました『コロナ禍でのテレワーク、どうなっている?』」においても、「テレワークにより感じたデメリットは?」との問いに「運動不足になった」と回答した人が最も多く、56.7%にのぼった。
さらに、筑波大学大学院と株式会社タニタなどが、東京都内にオフィスを構える大手企業の従業員約100人(平均年齢48歳)を対象に行った調査では、テレワークに切り替えた従業員の歩数がテレワークの実施前より29%減少しており、座っている時間も長くなったことがわかっている。
これらの結果から、テレワーク中の多くのワーカーは歩く機会が減り、運動不足になっている状況が見て取れる。運動不足は心身の不調を招き、仕事のパフォーマンスにも影響しかねない。また、長期的には糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病のリスクともなり得るだろう。
健康経営や従業員のウェルビーイング向上が企業にとって重要な課題となっている今、テレワークで生じる運動不足への対策は急務とも言える。本記事では、対策に取り組む企業の事例と、企業を対象とした運動支援サービスを紹介する。
運動不足の解消に向けた企業の取り組み
深刻化する運動不足に対し、どのような対策が望まれるのだろうか。ここでは、そのヒントとなる4社の事例を取り上げる。
1.コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社
コカ・コーラ ボトラーズジャパンでは、従業員の健康保持・増進を推進する健康経営の取り組みとして、社内向けウォーキングイベント「Sawayaka ウォーク」を2019年から開催している。
2020年には、テレワークで運動不足を感じている従業員が多いことから、ウォーキング専用のスマートフォンアプリ「Sawayaka Challenge」を自社で開発。これは、歩いた歩数と目標達成率が1日および1週間単位で表示されるオリジナルのアプリで、歩数の合計値で競う個人ランキングや、所属部署や支店などで編成する団体戦ランキングを表示する機能も備えている。従業員の健康増進とともに、テレワークが続く従業員間のコミュニケーションの活性化やチームビルディングにも役立てたい考えだ。
同社では、ウォーキングイベントを継続的に開催した結果、運動習慣に課題があると感じている従業員が減少傾向にあり、従業員の運動習慣確立の一助となっている。
2.ヤフー株式会社
2016年に「UPDATEコンディション」を宣言し、健康経営に取り組むヤフー。コロナ禍で従業員の運動不足や体重増加の傾向が顕著となったことから、それを解消するための施策「グッドコンディションボーナス」を開始している。
「グッドコンディションボーナス」は、健康保険組合が契約する健康管理アプリに歩数・体重を記録した従業員に対し、目標値を達成した場合にインセンティブを与えるもの。具体的には、月1回体重を測って記録し、1日4000歩以上の歩数を達成すると、翌月の給与として最大4000円が支給される仕組みだ。
厚生労働省が推奨する歩数は1日8000歩以上(男性9200歩、女性8300歩)だが、一日4000歩でうつ病の発症予防が期待できるとする研究結果があることから、現実的な目標として4000歩を掲げたという。導入の結果、10カ月後には1日4000歩以上歩く人の割合が約6割と、導入前に比べて4割近く増加した。
同社はほかにも、オンライン会議ツールのZoomを利用したラジオ体操やストレッチ講座を提供したり、事務所内に理想のウォーキングの歩幅(自分の身長✕45%)を体感できる「歩幅チェックスペース」を設置したりする取り組みも実施。こうした従業員に対する運動支援が評価され、スポーツ庁より「スポーツエールカンパニー2021」に認定されている。
3.GMOペパボ株式会社
レンタルサーバなどの個人向けインターネットサービスを提供するGMOペパボでは、2020年8月より「ペパボからだケア」制度を導入。従業員の健康を維持するための様々な取り組みを行っている。
例えば、週2回、1日最大30分まで就業時間中に運動ができる「#運動タイム」は、普段なかなか運動ができない従業員にも運動時間を確保してもらうことを目的とする。利用者は、チャットツールSlackの「#運動タイム」チャンネルで、「ランニングしてきます」や「ヨガやります」などと宣言してから運動を開始する。宣言することでやる気が高まるだけではなく、「みんながやっているんだったら自分もやってみよう」と、宣言を見た人が体を動かすきっかけにもなっている。
このほか、「ペパボからだケア」制度では次のような施策を実施している。
①健康や運動を考えるきっかけになるコンテンツ「ペパボほけんだより」を隔月で発行
②自宅での運動機会を提供するため、オンラインフィットネスサービス優待の導入
③産業医への健康相談や臨床心理士によるカウンセリングなど、相談窓口を複数設置
同社が従業員に実施したアンケートでは、85.7%が「会社の取り組みにより健康意識が向上した」と回答している。
4.株式会社アジャイルウェア
プロジェクト管理ツールなどのソフトウェア開発を手掛けるアジャイルウェアでは、2020年12月より「運動不足解消、一緒に頑張ろう手当」を導入。運動の見える化とモチベーション維持の仕組みづくりを進め、運動を継続できる環境の整備を目指している。具体的な内容は以下の通り。
①全従業員に運動量を計測できるスマートバンド(ウェアラブル活動量計)を支給
②目標消費カロリーを設定し、その達成度に応じて手当を毎月支給
・目標クリア(50kcal/日以上)で、「おやつは1日200円まで!手当」支給
・目標の3倍をクリア(150kcal/日以上)すると、「おやつは1日200円まで!手当」に加えて「運動手当(200円/日)」を支給
③Slackに専用チャンネルを設置。自由に運動や消費カロリーを報告
④全体ミーティングで消費カロリーと歩数の各TOP3を発表
少しでも運動すれば達成できるように、目標は50kcalで設定しているという。まずは、運動を習慣付けることを重視しているのだろう。実際に、導入の5カ月後に実施したアンケートでは、67.7%の従業員が「運動量が増えた」と回答している。
企業向け運動支援サービス
従業員の運動支援を仕組み化するうえで役立つのが、テレワーク下でも気軽に活用できる、アプリやオンラインプログラムだ。なかでも注目のサービスを紹介する。
1.株式会社BeatFit:企業向けヘルスケアアプリ「BeatFit for Business」
ヘルスケアアプリ「BeatFit」を運営するBeatFitは、従業員の運動不足を解消する企業向けアプリ「BeatFit for Business」を提供している。従業員一人当たりの利用料は、比較的安価に抑えられるという。具体的な特長は以下の通り。
①ダイエットやストレス解消、ウォーキング、筋トレなど、あらゆる人のニーズや関心に応える高品質のヘルスケアコンテンツを650以上提供
②1回3分~と、隙間時間に取り組めるため、三日坊主になりがちな人にも有用
③イベント機能を通して、社内で競ったり表彰したりすることが可能
④企業担当者は、専用のダッシュボードで従業員のアプリ利用状況を確認でき、データ分析によるインサイト発掘などに役立てることも可能
⑤特定保健指導対策や生活習慣病予防にも最適
運動不足の解消だけではなく、ストレスの緩和や社内コミュニケーションの活性化にも役立つ内容となっている。
2.株式会社ティップネス:オンライン健康づくりサービス
「健康で快適な生活文化の提案と提供」を企業理念に掲げるティップネスは、企業の希望や状況に合わせてカスタマイズできる健康づくりサービスを、オンラインで提供している。以下に、具体的なサービス事例をピックアップして紹介する。
①快眠eラーニング
Web会議システムを使用し、睡眠の質を高める生活習慣について学ぶプログラム。食生活セミナーや、呼吸法・呼吸筋ストレッチ・瞑想法の指導を行う。勤務時間中の眠気やだるさなどの不調を改善し、生産性を高めることを目的とする。
②自宅で楽しくできる筋トレ
定期的に体を動かす時間を提供することで、運動不足やメンタルの不調を予防・改善するプログラム。Web会議システムを使用し、オンラインLIVEレッスンと見逃し配信を行っている。
③活動量向上サポートによるメタボ改善
従業員の活動量を向上させ、特定健診受診者のメタボリックシンドローム診断基準該当者率の低下を目指すプログラム。歩数管理アプリを活用したウォーキングラリーや、運動教室のオンデマンド配信などを実施している。
様々な効果が期待される、従業員の運動支援
従業員の運動不足対策は、生活習慣病やメンタル不調のリスクを下げ、生産性の向上にもつながる取り組みと言える。さらに、全員参加型で行えば、新たなコミュニケーション機会を創出でき、チームビルディングへの貢献も期待できる。今回紹介した企業の取り組みやサービスはそれなりのコストを必要とするが、投資と捉えて戦略的に取り組めば、企業成長の資本ともなり得るだろう。
今後もしばらくは、感染防止対策を行いながらの生活が続く。個人においても、自ら機会を見つけて、無理なく体を動かす習慣を身に付けることが大切だ。