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LGBTフレンドリーな職場に必要なことは

オリンピックに向けLGBTへの取り組みが強化されていますが、企業はどのように取り組めばよいかソフトとハードの両面からご紹介します。

近頃よく話題にあがるLGBT。企業がこぞってLGBTへの取り組みを強化し始めています。その背景には、採用難による採用における差別化や離職防止のみならず、100兆円とも言われるLGBTマーケットやサービス向上を狙ったもの、また訴訟等のリスク対応であることもあります。

そもそもLGBTとは

そもそもLGBTとはLesbian(女性同性愛者)、Gay(男性同性愛者)、Bisexual(両性愛者)、Transgender(出生時の性と、自認する性が異なる人)の頭文字で、性的指向(LGB)と性自認(T)を包括する言葉です。電通ダイバーシティ・ラボの2015年の調査によるとLGBT層に該当する人は7.6%といい、約13人に1人の割合です。自分の周囲にはいないと思っていても、カミングアウトをされていないだけで、いないということではないのです。

日本でのLGBT取り組みの動き

最近の日本の動きとしては、2017年3月24日に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が策定した「持続可能性に配慮した調達コード」の人権の項目に「性的少数者(LGBT等)の権利尊重」という項目が明記されたことでも新しいですね。

日本では、性的少数者に対する差別を禁止する法律が存在しないだけでなく、G7の中で唯一同性カップルの結婚に準ずる権利を認めていません。2017年1月1日に男女雇用機会均等法に基づく事業主向けの「セクハラ指針」で職場でのLGBTへの差別的な言動がセクハラとされましたが、依然として国レベルでの取り組みは遅れていると言わざるをえません。

一方、自治体では東京都渋谷区や世田谷区等や、政令指定都市の北海道札幌市が同性カップルを認めるパートナーシップに関する政策を行っています。民間でもLGBTに対応する保険商品が出る等広がりを見せています。

LGBTは離職、転職が多い

LGBTの転職率は60.0%と、一般の平均51.8%よりも高く、雇用が安定しないといいます。*1  特定非営利活動法人虹色ダイバーシティの五十嵐ゆり氏によると、仕事ではなく働き方で職を選ぶ人が多く、フェイストゥーフェイスのコミュニケーションが少ないコールセンターやシステムエンジニア、プログラマーの仕事を選択する人が多いようです。さらに服装では、制服やスーツなど性が問われやすい仕事 も避けられやすいといいます。LGBTは職業選択の自由が狭まってしまっている現状があります。

対応の核は制度となるソフト

LGBTへの取り組みに着手する際、どこから手をつければいいのか悩まれるかもしれませんが、まずは制度を整えていくことが先決となるでしょう。

ユニリーバ・ジャパンでは、LGBT支援プログラム「ユニリーバ・プライド・ジャパン」を行い、社内相談窓口でセクハラやパワハラと同様に、匿名での相談を受け付け支援体制を整えています。

社内制度を充実させている企業としては、日本IBMがあげられます。同性パートナーを配偶者と同等の扱いとし、パートナーを事前に登録することで、特別有給休暇や赴任時の手当、慶弔金などの福利厚生や人事制度が同性パートナーにも適応できるようにしています。

野村証券株式会社ではダイバーシティ研修にLGBTも含め、新卒入社社員、中途入社社員、新任管理職、本社勤務社員向けに行っています。

ハードの問題はやはりトイレ  

トイレの問題は自認する性と出生の際の性が異なるトランスジェンダーにとっては大きな問題です。トイレの我慢、ストレスによって膀胱炎や下痢、便秘、尿漏れなどの排泄障害をトランスジェンダーの4人に1人は経験し、約65%が職場等のトイレに困る・ストレスを感じるという調査結果があります。LGBの16.5%も困る・ストレスを感じると回答しており、理由としては周囲の視線が気になるという理由が多いようです。

オフィスは学校と同様にパブリック空間とプライベート空間の間に位置します。パブリック空間と異なり、トイレを使用する際には自分の名前と顔を知っている人とすれ違ってしまいます。そのため、別フロアのトイレまで移動したり、共用トイレのあるコンビニまで行ったりする人もいます。トイレをストレスなく利用できるのは当然享受できるはずの人権でありますし、トイレを気にすることで著しく生産性を下げてしまうことは企業にとって得なことではありません。

選択肢を多く提示できること

だれでもトイレといった性別を問わないトイレが最近設置し始められています。嬉しいという声もある一方で、そのトイレを利用するこ とがカミングアウトにつながってしまうのでは困ってしまいますね。どのトイレに入ったのか分かりづらいような入口出口の動線の工夫などもあわせて求められるでしょう。

また、入口のサインもLGBTと特別視してしまうのも、気持ちよくないかもしれません。使いやすい・使いにくいというのは個人によって異なりますので、あくまでも選択肢の一つとしてどのトイレを使ってもいいですよという姿勢が大事でしょう。

all genderとあると利用していいのは分かりやすく伝わるが、だれでもトイレとも印象は異なる

トイレ以外もあるハード面での問題  

オフィスで問題視されやすいのは、まずはトイレですが、職場によっては、更衣室やシャワールーム、お風呂を備えているオフィスもあるでしょう。また、夜間仮眠が必要な仕事では男女別の仮眠室、一定数以上の労働者の使用を満たす場合は男女別の休養室・休養所の設置が必要です。個室を用意すればよいというわけではなく、あわせてその運用も配慮されなければ意味がありません。

おわりに

これらの取り組みは未だ始まったばかりで、手探り状態でもありますし、正解はないかもしれません。確実なのはソフトとハードどちらが欠けても全ての人が働きやすい職場にはなりません。LGBTへの取り組みはダイバーシティの問題でもあるので、取り組みを行っている企業はLGBTだけなく全ての人にとって働きやすいという数値も出ています。全ての働く人にとって職場が心地よくなるよう、まずは自分の周りにもLGBTはいるという認識で一つずつ取り組みを行ってみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人:Haruka Nakamoto