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効果的なワーケーションを実現するには | シナジーをもたらす目的別プログラム

休暇を楽しむだけでなく、効果的にワーケーションを活用するにはどのような方法があるのだろうか。本記事では相乗効果を期待できる目的別ワーケーションの事例を紹介する。

相乗効果を期待できるワーケーションの過ごし方

従来、仕事とプライベートは相反するものとして考えられていた。だが、近年では両者を統合することでシナジーが生まれ、仕事と生活の質を高めることができるという考え方が注目され始めている。

それが「ワークライフインテグレーション(work-life integration))」だ。日本の経済三団体の一つである社団法人 経済同友会が「21世紀の新しい働き方」として提唱したもので、仕事とプライベートを切り離してバランスを取るワークライフバランスに代わる新たな発想として関心を集めている。

以前はワーケーションと言えば、非日常的な環境でのリフレッシュや休暇取得の促進が主な目的だったが、最近では余暇時間を効果的に活用してシナジーを得られる体験をすることに注目が集まっている。そういった視点で見ると、仕事とプライベートを流動的に組み合わせて充実させるワークライフインテグレーションと、余暇と仕事を組み合わせて効果的に活用するワーケーションは、共通点があると言えるのではないだろうか。

しかし、ただ余暇を楽しむだけでは相乗効果は期待できない。事前に目的を決めて余暇時間を過ごすことでさまざまな気付きを得られ、シナジーが生まれるのだ。

目的に合わせたワーケーションプログラム

ワーケーションはハイブリッドな働き方の選択肢の一つに過ぎず、目的にはならない。だからこそ解決したい課題や目標をワーケーションの目的として設定することが、シナジーを得るうえで重要となる。今回は5つの目的別ワーケーションプログラムと、受け入れ事例を紹介する。

1. 地域貢献を目的とするワーケーション

地域の人々との関わりを通して、地域貢献や地方創生のサポートを行うことを目的とするももの。地域について深く知り、魅力を再発見して豊かなまちづくりへとつなげる、社会課題の解決や地域活性化を促すきっかけをつくるなど、さまざまな方法がある。

千葉県南房総市では「この先に出会う、働き旅」をテーマに、地域の人との交流できるプログラムを用意している。プログラムは「自然と文化体験に出会う」「SDGsに出会う」「新しい働き方に出会う」の3種類。南房総の魅力を知るとともに、地域課題の発見にもつながる内容となっている。

ビーチコーミングも、南房総市が用意するワーケーションのアクティビティの一つ。海洋ゴミの問題は年々深刻化しており、年間800万トンものゴミが海に流れ出ているとされる。海を守ることはSDGsの目標の一つとしても掲げられており、環境を守るために重要な取り組みだ。

環境保全はよく耳にするテーマだが、正面から向き合う機会は意外と多くない。こうした体験によって地域貢献にとどまらず、社会課題という大きなテーマへの気づきを得られるはずだ。

2. 事業開発を目的とするワーケーション

地域の視察や住民の人々との交流を通じて、イノベーションや新たなビジネスの創出を目的としたワーケーション。商品開発や町おこしなど、地域の産業とのコラボレーションがビジネスにつながる可能性をもつ。

宮城県丸森町の株式会社GM7は、サーキュラーエコノミーの考えに基づいたビジネス創出の場を企画しており、ビジネスマッチングやアイデア創出をテーマにワーケーションのプランをカスタマイズしてくれる。例えば、日中は町内を視察しながら自然や文化に触れ、夜はビジネス創生をテーマにしたセッションを開催することも可能だ。

事業開発を目的とするワーケーションプログラムでは、受け入れ先の自治体・企業が、地域の現状についてのレクチャーや地域の人々と交流する機会を設けるケースが多い。体験者は、そこで得られた知見をビジネスへとつなげる仕組みだ。地域にとって本当に価値のあるサービスを創出するためには、現地に赴いてその土地の文化を深く理解し、当事者意識をもつことが必要となるだろう。

静岡県焼津市が行う焼津漁港の空き倉庫を活用したワーケーション施設も、市内の企業との交流や連携を狙いとしている。焼津市では人口減少が続くなかで、働き方の変化を人口増加の足がかりにしようと取り組んでいる。

滞在者は施設でワーケーションをしながら地元の食や文化に触れるだけでなく、近くの商店の商品開発に協力するなど、地域に対する理解を深めてビジネスにつなげることができる。施設は一部がオープンしており、完全オープンは2024年を予定している。

3. ヘルスケアを目的とするワーケーション

主に企業が福利厚生制度として用意しているワーケーションプログラム。休暇等を利用して従業員が自発的に行うもので、心身の健康を向上させる効果が期待できる。

静岡県浜松市が行うのは、健康診断や、ヨガ、ウォーキング、サイクリングなどの体験が付いたワーケーションプログラムで、心身ともにリフレッシュできる。忙しい現代人にとって健康はおろそかにしてしまいがちな部分だが、豊かな生活は健全な心身があってこそ。このような体験を福利厚生として導入できれば、ワーカー個人の健康に対する関心も高まるに違いない。

4. チームビルディングを目的とするワーケーション

アクティビティや対話を主体とし、コミュニティ内に好影響を与え、チームの結束力や一体感を高めることを目的とするもの。テレワークを主体とする企業にとっては、ワーケーションを通じて従業員が集まる機会を設けることで、自社への愛着や文化の理解を促す機会を得られる。

北海道北見市や長野県の軽井沢リゾートテレワーク協会では、ワーケーションのアクティビティとしてカーリングを取り入れるプログラムを行っている。カーリングはチーム内の連携が非常に重要な競技で、団結力を高める効果が期待できる。一見仕事とは関係なさそうなユニークなプログラムが、実はチームビルディングにつながるという好例だ。

5. 趣味・自己実現を目的とするワーケーション

趣味の活動や自己実現を目的とするワーケーション。プログラムを通じて精神的な満足度を得ることで、生活の質の向上にもつながると考えられる。

グリーンラボ株式会社が運営する埼玉県深谷市のFUKAYA WORKSは、農園の中のワーケーション施設。農業とワーケーションを掛け合わせた「アグリワーケーション」を体験できる。

グリーンラボ株式会社のプレスリリースより

FUKAYA WORKSには月額プランや法人プランがあり、長期的な利用も可能だ。長期利用できる仕組みがあることで、ワーケーションを単なる一過性のイベントではなく日常的なものとしてとらえやすく、再度ワーケーションを利用する理由付けにもなる。

暮らしのサイクルの中にワーケーションを取り入れることができれば、ワークライフインテグレーションを体現することにつながるだろう。

ワーケーションは目的をもつことで、より充実する

さまざまなツールやサービスの普及により、どこにいても仕事ができるようになった。だからこそ、そこでどう過ごすかが重要となる。従来のリフレッシュや休暇の取得を目的としたワーケーションでも充実した時間を過ごせるが、事前に目的を定めることで、いっそう効果的で充実した時間を過ごせるに違いない。

これからワーケーションの取得を考える人は「目的」を柱にして、ワーケーションの滞在先を選んでみることをおすすめしたい。なぜなら、異なる価値観に触れ、オフィスではできない体験をすることこそ、ワーケーションの醍醐味なのだから。

この記事を書いた人:Manami Sakakibara