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行っておきたい!業界の最新トレンドがわかる国際家具見本市

インテリアの最新トレンドに触れることができる国際家具見本市。そのなかでもオフィス家具の取り扱いがある世界の見本市について、その概要と回り方のコツを紹介する。

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進化を続けるオフィス家具

快適でデザイン性の高いオフィス家具は、ワークプレイスを豊かにするのに欠かせない要素だ。特に近年は、テクノロジーの進歩にともない、見た目の美しさと機能性を融合して進化を続けている。そうしたオフィス家具業界の最新動向を知り、新たなインスピレーションを得る場として、国際見本市が世界各国で開催されている。

今回は、オフィス家具を取り扱う代表的な国際見本市を紹介するとともに、見本市を効率的に回るためのコツをお伝えしたい。

 

世界の代表的な国際家具見本市

国際見本市の魅力は、何といっても有名ブランドやデザイナーがひとつの会場に集っていることだ。普段なら時間をかけて何カ所もショールームを見て回らなくてはならないところを、見本市ならひとつの会場で完結させられる。

展示会は展示物の観覧や説明を聞くことが主になるのに対し、見本市はよりビジネスに軸足を置いた催しになる。そのため、企業が開発・製作した新製品や先進的なテクノロジーのデモンストレーションを見たうえで、具体的な商談に進められることも多い。
さらに国際見本市では、世界中からさまざまな専門家を招いて、講演会やセミナーなどのイベントを並行して開催している。そこで業界の専門家と情報交換し、ネットワークを築くことも可能である。ここではそんな国際見本市について、オフィス家具に関連するものを3つ紹介する。

1. NeoCon(ネオコン)

NeoCon(The National Exposition of Contract Furnishings)」は、1969年からアメリカイリノイ州のシカゴで毎年6月に開催されている商業インテリアの見本市だ。37万2000平方メートルもある会場(Merchandise Mart)が出展ブースで埋め尽くされる、北米最大規模の商業インテリア見本市である。主催者発表によると、2023年は400社以上の企業がブースを構えたという。

 

NeoCon開催時のMerchandise Mart外観(画像はNeoConのWebサイトより)

 

オフィスのみならず、ヘルスケアや教育施設、公共スペース、政府機関などのデザインに関する担当者が、毎年このイベントに集まり、学びやビジネスの機会としている。またNeoConは、業界の主要メーカーだけでなく、新興企業も参加しているところが特徴だ。

ブーススタッフと来場者でにぎわうNeoConのフロア(画像はNeoConのWebサイトより)

 

主催者はNeoConを多面的で没入型の体験を提供する見本市にしたいと考えており、実際に未来を見据えたプログラム、時代を先取りした研究の紹介、変化する世界のニーズを知るための取り組みに定評がある。この見本市には毎年約5万人が訪れる。

 

Happy Hourにはドリンクが振る舞われ、生演奏を聞きながら会話を楽しむことができる(画像はNeoConのWebサイトより)

また、基調講演を行うゲストスピーカーも多彩だ。2023年に行われた講演の一例を挙げると、「ヒップホップ建築家」の異名をもつマイケル・フォード氏とシカゴ出身でグラミー賞受賞歴のあるラッパー(現在はマサチューセッツ工科大学の客員教授)であるルーペ・フィアスコ氏が「デザインのリズムを探る(Exploring the Rhythm of Design)」というテーマでトークを繰り広げた。テーマと講演者を聞くだけでワクワクしてくるプログラムである。
このようにNeoConは、アメリカならではの規模と先進性を取り入れた見本市といえる。オフィスに先進性を求めるなら、この見本市の展示は非常に参考になるはずだ。

2. ORGATEC(オルガテック)

次は、欧州ドイツで開催される「ORGATEC」について紹介したい。日本では「ケルン国際オフィス家具専門見本市」とも呼ばれている。隔年の10月にケルン市で実施される世界最大のオフィス・ファシリティ専門見本市だ。ケルンメッセ(Koelnmesse)という広さ28万4000平方メートルの広大な国際コンベンションセンターに、600社以上がブースを構える。

ORGATEC会場を訪れる来場者たち
来場者で賑わうORGATEC会場(画像はすべてORGATECのWebサイトより)

 

2022年に開催された「ORGATEC 2022」は、まだコロナ禍の余波が残る時期であったにもかかわらず、43カ国から計686社が出展したという(2018年は39カ国から749社)。

実際に働く場面を想像できる展示も(画像はORGATECのWebサイトより)

国際色が豊かなのが特徴で、2022年は出展社の78%が外国からの参加となり、来場者は130カ国以上から約4万5000人にのぼったと公式発表されている。ORGATECの魅力はこの国際性であり、多様性であると言えるだろう。世界のさまざまなブランドが、常に進化する労働環境の現在および未来に対応する製品を発表しているため、きっと自社に合うインテリアを発見することができるだろう。
また、ORGATECはアジアマーケットに注目し、2022年から東京ビッグサイトでも「ORGATEC TOKYO」を開催している。本家が2年に1度の開催なのに対し、こちらは2022年の初回以来、毎年春に開催されている。ちなみに2023年の「ORGATEC TOKYO 2023」は、14カ国から127社(うち海外からは45社)が出展し、2万6000人以上が来場したという。東京開催のクオリティはORGATEC主催者からも高く評価されているため、ドイツでの本家イベントが開催されない年などはぜひ東京ビッグサイトでの展示にも注目してほしい。

 

3. Salone del Mobile.Milano(ミラノサローネ)

最後に紹介するのは、「Salone del Mobile.Milano(ミラノサローネ国際家具見本市)」。日本では「ミラノサローネ」の通称で親しまれている。1961年から開催されている老舗の国際家具見本市で、家具やインダストリアルデザインの分野においては、世界最大規模のイベントと言われている。最も盛況だったコロナ禍前の2019年には、世界181カ国から約38万人もの来場があった。

 

ミラノサローネの会場Fiera di Milano(画像はFiera di MilanoのWebサイトより)

 

オフィス家具に関しては、1982年に「サローネ国際オフィス見本市(現Workplace3.0)」という併催見本市としてスタートした。この「Workplace3.0」では、オフィス家具以外にも照明やオフィスアクセサリーからオーディオビデオ技術、空調まで幅広く出展されている。

ミラノサローネのオフィスインテリアの見本市「Workplace3.0」の様子(画像はSalone del Mobile.MilanoのWebサイトより)
スタイリッシュなオフィス家具が並ぶ(画像はSalone del Mobile.MilanoのWebサイトより)

「Workplace3.0」のみならずミラノサローネ全体の特徴として、デザイン性の高さが挙げられる。オフィスインテリアを「Workplace3.0」で堪能した後に、ミラノサローネの他のエリア、例えば「サローネ国際インテリア小物見本市」や「サローネ国際照明見本市(通称エウロルーチェ、奇数年開催)」などを見て回るのもよい刺激になるだろう。

国際見本市の回り方6つのコツ

こういった国際見本市は大規模イベントであるため、計画性なしにすべてを見て回ることは不可能だ。見たいものを効率よく見て回るためのヒントを挙げていきたい。

1. 出展社のチェック

どのような企業がその見本市に出展しているのかチェックし、優先順位をつける。

2. お目当てのブランドとの事前予約

仮に見たいブランドのブースがある場合、早めに予約をすることがスムーズに回るコツだ。ほとんどの国際見本市は、会期中すべてのショールームが見学者にオープンになっているものだ。しかし、事前にブランドと話す時間をブッキングしておくと、販売やデザインのキーマンと話せる可能性が高くなる。

3. アプリのインストール

近年、国際見本市のような大規模イベントは、独自のスマートフォンアプリを用意していることがある(ORGATECは2024年より実施開始。ORGATEC Tokyoは既にアプリ実装済み)。事前にダウンロードしておくと、イベントスケジュールなど必要な情報に簡単にアクセスできる。

4. 館内移動ルートを考える

事前にリストアップした回るべきブースをどういった順に巡ればよいのか、フロアマップを見て計画を立てる。マップは多くの場合、公式ホームページやアプリ内で公開されており、会場では紙のマップが配布される。また、ミラノサローネは2023年度から公式サイト内でインタラクティブマップのサービスを始めた。出展社の名称を入力すれば、ブース間移動の所要時間やルートを確認することができる。こちらの公式動画で詳しく解説されている。

5.服装

ほとんどの見本市は「オフィスカジュアル」な服装で問題ない。もし不安な場合は、事前に公式サイトなどで過去の様子を確認するとよいだろう。いずれにしても、履きなれた靴で行くことを強くお勧めしたい。

6. 所持品

見本市への参加経験者は一様に、名刺は必ずたくさん持参するよう念を押している。余裕をもった枚数を持参しよう。また、会場内でアプリを使用したり、スマートフォンのカメラで撮影したりすることを考えると、モバイルバッテリーは持参したほうがいいだろう。

出展ブースが立ち並ぶNeoCon会場(画像はNeoConのWebサイトより)

 

時間を有効活用するために

はじめて国際見本市に参加する場合、あっという間に時間が過ぎ去ってしまうかもしれない。重要なのはやはり十分な事前準備だ。それぞれのイベントの特色を理解し、見どころの位置関係を把握して、自分の体力とも相談しながら有意義な滞在にしてほしいと願う。

 

この記事を書いた人:Naoko Kurata

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