オフィスにアートを取り入れたいときは?おすすめサービス6選
魅力あるオフィスづくりに「アート」の導入が注目されている。多様なアート作品の中から自社の空間に合う作品をどう選べばよいか。おすすめの導入支援サービスを紹介する。
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アート市場の活性化がオフィスにもたらすものとは
世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」とスイスの金融機関・UBSが毎年発表している、アート市場の分析レポート「A Survey of Global Collecting in 2022」によれば、2021年のアート市場規模は651億ドル(約8.8兆円)。パンデミックで落ち込んだ2020年と比較すると約30%増となり、2019年の規模を上回ったとされる。
世界的なアート市場の活性化は、オフィス環境にも影響を与えている。とりわけハイブリッドワークの導入により、出社ならではの価値が求められている現在、空間に彩りを与え、発想やコミュニケーションを刺激する手段として、オフィスへのアート導入に注目が集まっているのだ。
母数は小さいが、アートがオフィスにもたらす効果を示した調査結果もある。オフィスウォールアート事業を手掛ける株式会社NOMALは2022年10月、同社のウォールアートを導入した企業の社員47名を対象に導入前後でのオフィス空間の印象の違いについてアンケートを実施した。ウォールアートとは、アーティストが壁や天井などに直接描く絵画のことである。
その結果、導入前後の印象の比較について、63%が「とてもポジティブ」、20%が「ポジティブ」と回答した。
ウォールアートを見て、導入前と比較してどのような印象を受けましたか?(画像は株式会社NOMALのプレスリリースより)
その理由として、「雰囲気が明るくなり活気を感じる」「美的センスの刺激を受けて仕事が捗る」「オンラインミーティング等の背景に良い」などが挙げられた。そのほか「アーティストと話せて感銘を受けた」といった回答もあり、アートの導入過程そのものに刺激を受けたワーカーもいたことがうかがえる。
また、ウォールアートのオフィスへの導入について、「あった方がより良いオフィスになると思う」と回答した社員が78%にのぼった。
オフィスへのウォールアートの導入について、あなたの意見に最も近いものは何ですか?(画像は株式会社NOMALのプレスリリースより)
その理由については、「思考や発想の転換になった」「意図してみなくても目に入るだけで刺激される」「コミュニケーションが増えた」が挙げられ、オフィスで働くワーカーへの好影響を示す声が多かった。また、「外部からみて感性が優れた会社だと思われる」という対外的なブランディング効果を評価する意見もみられた。
「アートのあるオフィス」を実現する導入支援サービス6選
ワーカーにとって魅力的で、かつ対外的にブランドイメージを向上させるオフィスづくりを行いたいと考えたとき、「アート」は見逃せない切り口となっている。近年は、オフィスへのアート導入を支援するサービスも増えてきた。ここでは、単にアートを販売するだけでなく、導入過程をカルチャー醸成に役立てられたり、アートに詳しくない担当者も利用しやすいなど、特徴あるサービスを紹介する。
1. アートで企業ビジョンを可視化する「WASABI ART&DESIGN」
まず、アートが美的な観点でのメリットのみならず、企業文化を伝えるものとしても機能することを示す好例として、先述のNOMALが手掛ける「WASABI ART&DESIGN」を紹介したい。
画像はWASABI ART&DESIGNのWebサイトより
WASABI ART&DESIGNでは、オフィス空間の力の源泉となるような、ストーリー性のあるウォールアートを施工するサービスを展開している。
同サービスでは、初回に無料で最大30名までのワークショップを提供。そこで企業の個性や美意識を把握したうえで、アーティストの検討、コンセプトの決定、ラフ案の制作、ウォールアートの制作、アート制作の過程を撮影した動画によるストーリーのシェアまでをひとつのパッケージとしている。
ウォールアートの制作は、各工程で企業側とアーティストがコミュニケーションをとることにより、社員が企業文化の理解を深めたり、再設定できたりすることにも大きな価値がある。常に目に入るウォールアートは、ワークショップで確認し合った企業文化を社内外に発信する役割を果たしてくれるだろう。
2. ARアプリで導入時の室内がイメージできる「CICAP」
オフィスにアートを取り入れようと考えたとき、真っ先に思い浮かぶのがアート販売サービスだろう。数あるサービスのなかでも、インテリア界の老舗・カッシーナ・イクスシーが提供する「CICAP( カッシーナ・イクスシー・コンテンポラリ・アート・プロジェクト)」を紹介したい。
CICAPでは、取り付け場所や空間の広さ、インテリアの趣向、予算等に応じて最適な作品を提案してくれる。なかでも「ARTE ANELLO(アルテ・アネッロ)」というコレクションでは、比較的安価な価格帯でアートが楽しめるよう、シート状にしたアート作品を約200点用意。直営店にて好みの作品と額縁をセレクトすることができる。
また、オンラインストアで額装された作品を購入することも可能。AR(拡張現実)アプリが提供されているため、自社のオフィス空間にその作品が合うかどうかを試すことができる。スペースに対してサイズが適正か、色やテイストがインテリア全体と調和するかといった、アート選びの際に生じやすい悩みを解決するのに役に立つ。
また、オフィスに限定されないが、公式Instagramアカウントにおいて家具とアート作品のスタイリング事例が掲載されている。
公式Instagram(@cassinaixc_official)に投稿されたスタイリング画像の抜粋(画像はカッシーナ・イクスシーのWebサイトより)
アートをオフィスに採用するイメージが湧かないときには、同サービスのアプリやスタイリング事例を参考にするのもいいだろう。
3.サイズ毎に価格が明示された、アートフォト専門店「YELLOWKORNER」
アートには多種多様な作品があるが、フランス発のアートフォト専門店「YELLOWKORNER」では、写真作品に特化した販売サービスを提供している。東京と横浜のギャラリーで現物が見られるほか、オンラインショップも展開。若手から著名作家まで200名以上のアーティストのアート写真を手ごろな価格で販売している。
YELLOWKORNERでは、2000点以上の作品を「Urban」「Landscape」「Fashion」「Creation」「Wild Life」の5カテゴリーに分類。空間づくりのテーマに合った作品が見つけやすい仕組みとなっている。
画像は株式会社イエローコーナージャパンのWebサイトより
取り扱うアート写真はそれぞれ世界限定販売のコレクティブなアイテムでありながら、サイズごとの価格が明示されている。限られた予算内でアート作品を選びたい場合は、このようにサイズ毎の作品価格を事前に把握できるサービスを利用するのも一案だ。
4.低価格で気軽に試せる、アートのサブスク「Casie」
アート作品をオフィスに設置する際には、その作品が本当に自社の空間に合うかどうかが気になるものだ。また、季節やイベントごとに作品を入れ替えたいという企業もあるかもしれない。
そんな悩みやニーズに応えてくれるのが、アートのサブスクリプションサービス「Casie(かしえ)」だ。同サービスは、1万点以上のアート作品のなかから、毎月好きな作品をレンタルすることができる。価格は、作品のサイズに合わせて3つのプランから選択でき、月額2200円~。
画像はCasieのWebサイトより
また新サービスとして、アンケートの回答結果をもとにアートコンシェルジュが選んだアート作品が毎月届けられる、アートの定期便「Casie for you」も提供中。いずれのサービスも気に入った作品を購入することができるため、試用版として利用するのもいいだろう。
5.日本語対応で、海外の優れたアート作品に出会える「TRiCERA ART」
アート販売サービスを活用して、特に海外作品や投資価値のある作品に出会いたいという企業におすすめなのが「TRiCERA ART」だ。TRiCERA ARTは、世界 126 カ国以上のアーティストによる絵画・写真・彫刻などのアート作品約7万4000点を取り扱う通販サイト。世界の新進気鋭アーティストの新作が毎月登録されており、ユーザーはすべての作品を真贋証明書付き(ブロックチェーン)でオンラインで購入することができる。
画像はTRiCERA ARTのWebサイトより
通常、海外の優れたアート作品を購入しようとすると、物流の煩雑さや外国語での交渉など多くの障壁がある。同サービスを利用すれば、企業はアーティストとの交渉、集荷や配送、返品手配に至るまでの作業を一貫して委託できる。
日本語にも対応しており、注目のアーティストや飾る場所に合うアートなどについてチャットで相談できる機能もあるため、日本企業も気軽に利用しやすい。
6.オフィス空間に“機能するアート”を提案「ARTBOARD」
ここまでは、オフィス空間にアート作品を導入する事例を紹介してきた。一方、株式会社アマナとコクヨ株式会社が共同開発した、ホワイトボードのように描くことができる「ARTBOARD(アートボード)」は、‟機能するアート”だ。
画像は株式会社アマナのプレスリリースより
正方形、長方形、丸形、楕円形の4種類の形状があり、それぞれ16種類のアートデザインから選ぶことができる。同プロダクトは、アマナの美術プリント工房「FLAT LABO」が、プリントから壁掛け仕様の加工に至る製品化の工程を担当。アートとして鑑賞する美しさに加え、ホワイトボードのように文字や図形を書き込むことができる機能性を兼ね備えた作品に仕上げている。
メーカー小売価格は67万5000円〜。決して安価ではないが、オフィス家具や什器などのオフィスづくりに必要な備品のなかに、アートの要素を取り入れる選択があることを示唆する新しい提案だ。
アートを企業運営の一助に
労働環境の心理学を専門とするイギリス・エクセター大学のクレイグ・ナイト博士は、オフィスにアートや植物が配置されている「豊かなオフィス」で働くワーカーは、全く飾り気のない「無駄のないオフィス」で働くワーカーよりも、平均15%早く仕事を完了したという研究結果を示している。
これまでアート導入のメリットについては、個々の感覚を中心に語られることが多かった。しかし、世界的なアート市場の拡大を受け、今後はアートの具体的な効能についての実証実験が増えていくものと思われる。より良い企業運営へ向け、オフィスへのアート導入による効果を実体験してみてはいかがだろうか。