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2023年世界のオフィスデザインのトレンドは?キーワードは「グリーン化」と「ジャパンディ」

2023年はどのようなオフィスデザインがトレンドとなっているのか。キーワードとなる「グリーン化」と「ジャパンディ」について、海外のオフィス事例を交えて紹介する。

2023年のオフィスデザインのトレンドとは

ファッションやインテリアに流行があるように、働く場であるオフィスにもトレンドは存在する。年末年始には、さまざまな海外メディアが「これからのオフィストレンドはどうなる?」と独自の分析を掲載している。

オフィストレンドを語るさまざまな記事に共通してみられ、筆者も注目するのがオフィスの「グリーン化」だ。ここから連想するのは、アムステルダム自由大学メディカルセンターのvan den Bergらが2015年に発表した研究である。

この研究では、ストレス負荷をかけた後に「緑豊かな都市空間」と「建物ばかりの都市空間」の写真を見せたところ、「緑豊かな都市空間」の写真を見たほうが副交感神経が活性化していた。副交感神経の活性化はリラクゼーションにつながり、ストレスからの回復を助ける。つまり、勤務中にグリーンが視界に入ることは、ワーカーのメンタルに良い作用をもたらすことが期待できる。

オフィスグリーンを扱うオランダの企業Hoogendoorn Projectbeplantingは、自社のWebサイトやSNSでオフィスのグリーン化のヒントを披露している。サイトに散りばめられた画像を眺めているだけでもインスピレーションが得られそうだ。

画像はHoogendoorn ProjectbeplantingのFacebookより

そしてもうひとつ、オフィスのトレンドを語るにあたり無視できないキーワードが「Japandi」である。これは今最も人気のあるインテリアトレンドのひとつで、ジャパンディと発音する。日本(Japanese)と北欧(Scandinavian)を組み合わせた造語で、インテリア業界で働く人々が近年使い始めた新ワードだ。

日本と北欧は地理的には離れているが、インテリアデザインに関しては実は共通点が多い。シンプルな機能性、天然素材のあたたかみ、落ち着いた色彩などであり、美学の共通する両者の融合が居心地の良さや快適さを生み出すと注目を集めている。日本人としては、世界のトレンドに日本の要素が取り入れられていることは誇らしくもある。

画像はHoogendoorn ProjectbeplantingのWebサイトより

ジャパンディのインテリアにも、観葉植物などのグリーンを積極的に取り入れるという特徴がみられる。コロナ禍やウクライナ侵攻による影響からの回復を図る2023年のビジネスシーンでは、無意識にオフィス内にも平和的な雰囲気を求める傾向があるようだ。「グリーン化」や「ジャパンディ」により、あたたかみや居心地の良さを実現したオフィスであれば、従業員のオフィス回帰を促すことができるかもしれない。

 

世界のグリーンオフィス事例

海外には斬新な方法でスタイリッシュなグリーン化に成功しているオフィスがある。以下に、オフィスのグリーン化の参考になる事例を画像を交えて紹介したい。

1. Dura Vermeer Inspiration Centre(オランダ・ユトレヒト)

グリーンによってさり気なく区切られた空間(画像はD/DOCKのWebサイトより)

これは、オランダのユトレヒトにある「デュラフェルメール・インスピレーションセンター(Dura Vermeer Inspiration Centre)」の内部の様子だ。同センターは、オランダ有数の建設会社・デュラフェルメール社が自社の従業員やバイヤー、クライアント、パートナーのためにつくったコラボレーションとネットワーキングのための建物だ。建築デザインチーム「D/DOCK」はこのワークステーションの中に、意識的にグリーンを取り入れている。

吹き抜けを貫く緑の壁(画像はD/DOCKのWebサイトより)

上の画像では一部のみを切り取っているが、1階から4階までを貫く吹き抜けエリアは上から下までこの緑の壁がつながっている。

室内の至るところにさり気なくグリーンが配置されている(画像はD/DOCKのWebサイトより)

ジャングルのように過剰にグリーンを取り入れるのではなく、あくまでも緑が視界に心地よく収まるバランスを心得ている。また、ウッド建材とグリーンとのコンビネーションは、ジャパンディの要素も感じさせる。

2. Sid Lee Architecture(カナダ・モントリオール)

グリーンと自然光の明るさが開放感を演出している(画像はSid Lee ArchitectureのWebサイトより)

続いては、カナダのモントリオールにある建築会社「Sid Lee Architecture」のグローバル本社の様子だ。グリーンを多く配置していることに加え、ガラスの天井から自然光を取り入れ、明るく開放的な空間に仕上げている。

大きなガラスの天井から自然光が降りそそぐ(画像はSid Lee ArchitectureのWebサイトより)

植物は光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を作り出す。つまり、日当たりの良いオフィスに植物を設置すれば、オフィスが新鮮な酸素で満たされるというおまけがついてくるのだ。人間が吸い込む酸素の20%は、脳により消費されるといわれている。自然光と植物が豊富なオフィスは、ワーカーの思考力や集中力に好影響をもたらす可能性もある。

同社のようにガラスの天井を設けるのは大変だが、どこか一カ所でも日当たりの良い場所を用意しグリーンを配置できれば、植物にもワーカーにも良い作用をもたらしてくれるだろう。

3. Mycsa Mulder(スペイン・マドリード)

天井の植栽がインテリアに映える(画像はEMMME STUDIOのWebサイトより)

こちらはスペインのマドリードで産業機械の製造・販売を手掛けるMycsa Mulderの本社の様子だ。インテリアデザイン会社「EMMME STUDIO」が手掛けたもので、特徴は先ほどの緑の壁ならぬ「緑の天井」にある。オフィス内のそこかしこで、天井が緑豊かな庭園と化しているのだ。

執務空間ではグリーンがパーテーションの代わりに(画像はEMMME STUDIOのWebサイトより)

上の画像からは、ガラスで仕切られたミーティングスペースの中にも天井庭園があることが確認できる。また、作業用のデスクもプランターで仕切られており、他人の作業の様子を視界からトリミングし、自分の作業に集中することができそうだ。

エントランスにもふんだんにグリーンが取り入れられている(画像はEMMME STUDIOのWebサイトより)

エントランスの受付スペースには、まるでぶどう棚のような天蓋があり、ゆるやかに下がる葉が美しい。このオフィスは、頭上という見落としがちなスペースを上手に有効活用した好例だろう。

オフィスグリーン化の第一歩を踏み出すには?

ここまで3つの海外事例を紹介した。では、既存のオフィスのグリーン化を図る際には、どこから始めればよいだろうか。ファーストステップとして、オフィスにプランターを並べるというのは導入がしやすい。ウッド素材のシンプルなプランターを採用すれば、ジャパンディの要素も取り入れることができる。

画像はHoogendoornのFacebookより

また、オフィスの印象を大きく変えたいというときには、比較的導入のしやすい植栽と一体化したパーテーションはいかがだろうか。

可動式のパーテーションをつなげて壁のようにも使える(画像はPlantcentraalのWebサイトより)

パーテーションに苔をあしらった「苔壁」である。この苔壁を扱うPlantcentraalによると、苔壁は吸音性があり、周囲の雑音の煩わしさを軽減してくれるのだという。さらに、苔は日光を必要としないため、日当たりが良くないオフィスでも問題なく設置できるそうだ。見た目のインパクトも大きく、ワーカーの刺激になるのみならず、訪問者の目をひく効果もあるだろう。

求められているのは、安心感があり健康的に働ける環境

オフィスのグリーン化もジャパンディも、要はそこで働く人々の心身の健康を意識したものだ。いま求められているのは、平和的な安心感のあるオフィスであり、健康的に働ける環境ということなのかもしれない。今後も海外の最新のオフィス事情についてレポートしていきたい。

この記事を書いた人:Naoko Kurata