サードプレイスオフィスとは? 最適なテレワーク環境を見つける検索サービス5選
自宅でも職場でもないテレワーク環境へのニーズの高まりとともに、全国的にサードプレイスオフィスが増加している。サードプレイスオフィス活用のメリットと検索サービスを紹介する。
Facility, Style
サードプレイスオフィスとは?
外出中や出張先で緊急のオンライン会議に参加したいが、適した場所が見つからなくて困った経験はないだろうか。また、自宅でテレワークをしていて、仕事モードのスイッチが入らなかったり、家族がいて集中できなかったりしたことはないだろうか。そのようなときに役に立つのが「サードプレイスオフィス」だ。
サードプレイスオフィスとは、自宅でも職場でもない、第3の場所を指す。よく利用される場所として以下の6つが挙げられる。
・カフェやファストフード店
・コワーキングスペース
・サテライトオフィス
・シェアオフィス
・テレカンスペース
・ワーケーション(旅先でのコワーキングスペース活用)
テレワークが普及し働き方が多様化するなか、作業内容や状況に応じて最適な場所を選ぶことの重要性が増している。働く場所として新たな選択肢となる、サードプレイスオフィスの特徴と探し方を紹介する。
職場でも自宅でもないワークプレイスに求めるもの
株式会社ブイキューブが2022年2~3月に実施した「家でも職場でもない第三の場所(サードプレイス)に関する実態調査」によると、「仕事ができる場所として、サードプレイスを利用したいと思うか?」という質問に、54.0%の人が利用に前向きな意向を示している。
画像は株式会社ブイキューブのプレスリリースより
また、「サードプレイスは自宅より効率的に働けると思うか?」との質問に、自宅より効率的と答えた人は67.6%と約7割にのぼり、サードプレイスオフィスの潜在的な需要の高さがうかがえた。
画像は株式会社ブイキューブのプレスリリースより
「サードプレイスの必要性が高まった理由」については、「ひとりの時間がとれるから」が45.5%で最も多く、「やりたいこと、やるべきことに集中できるから」「自宅に家族がいてやりたい、やるべきことがしづらいから」「生活にメリハリがつくから」がそれに続いた。
画像は株式会社ブイキューブのプレスリリースより
この調査結果から、テレワークの導入が進む一方で、自宅で快適に仕事を行う環境づくりが難しいケースがあることがわかる。こうした背景から自宅でも職場でもない、効率的に働ける場所へのニーズが高まっていると考えられる。
サードプレイスオフィス活用のメリット
冒頭で述べた通り、サードプレイスオフィスにはさまざまな形態があり、いずれにも会社や自宅にはないメリットがある。ここではそのメリットについて、サードプレイスオフィス全般のメリットと、コワーキングスペース特有のメリットに分けて紹介したい。
サードプレイスオフィス全般のメリット
・通勤時間を短縮できる
近場のカフェやコワーキングスペースを利用すれば、通勤時間を短縮できる。会社まで片道1時間以上かかる人なら、往復で2時間近くの短縮が可能だ。浮いた時間を家族と過ごす時間にあてたり、スキルアップのための時間にあてたりすることもできる。サードプレイスオフィスを活用することで、限りある時間を有効利用できるだろう。
・仕事とプライベートのバランスがとりやすい
自宅でのテレワークでは仕事とプライベートの切り替えが難しいという悩みを抱えるワーカーは多い。サードプレイスオフィスがあれば仕事とプライベートにメリハリがついて集中力アップにつながるだろう。仕事を早く終わらせてプライベートを充実させることができれば、生産性とワークライフバランスの向上が期待できる。
・メンタルヘルス対策になる
働く場所を自分で選べることは、職場の人間関係によるストレスからの解放にもなる。職場よりもサードプレイスオフィスのほうがリラックスできるという人にとっては、メンタルヘルス対策になり得る。企業にとっては、人間関係のストレスやメンタルヘルスの不調による退職を抑止する効果が期待できる。
コワーキングスペース特有のメリット
・肩書きにとらわれず平等な立場で利用できる
コワーキングスペースの場合、さまざまな属性の人たちが同じ空間を共有している。それぞれが仕事を持ち寄りながら、自分のペースで仕事をしており、縦社会というより「横のつながり」といった雰囲気がある。職場ならではの人間関係にとらわれずに平等な立場で利用ができるというのも、第3の場所ならではの環境といえるだろう。
・異業種との情報交換が可能
めまぐるしく変化する現代社会において、常にアンテナを張って情報収集を行うことは、あらゆる職種にとって重要だ。といっても日々の業務に追われる環境では、自分から情報をとりにいく余力がなくなってしまう。コワーキングスペースならではの「横のつながり」により新しい人間関係が構築できれば、異業種との情報交換が行える。いつもとは違った角度や視点から得た情報は、知識の引き出しを増やしビジネスシーンにおいて役立つことだろう。
・新たな学びへの動機や刺激につながる
コワーキングスペースには、学生や資格取得をめざす社会人など仕事目的以外で利用する人もいる。世代を超えた交流、異業種との交流は情報交換ができるだけでなく、職場では味わえない刺激を得られるメリットがある。ビジネスの幅を広げたいと感じている人にとっては、新たな学びへの動機付けにつながる環境といえる。
サードプレイスオフィスの検索サービス5選
近年、さまざまな形態のサードプレイスオフィスが全国各地にオープンしている。目的や用途にマッチした場所を選ぶには、検索サイトを利用するのが便利だ。代表的なサービスをピックアップして紹介したい。
1. テレスペ(法人向け)
「テレスぺ」は法人向けのテレワークスペース検索サービスだ。平日の日中の稼働率を向上させたいシェアオフィスやホテル、カラオケ店などのスペース提供事業者と、ハイブリッドワークにサードプレイスオフィスを活用したい企業とを結ぶマッチングサービスである。
画像はテレスぺのWebサイトより
エリアと利用時間を選択して検索すれば、利用可能なテレワークスペースが表示される。企業が法人登録すると、社員全員分のアカウントが発行され、利用代金はまとめて会社へ請求される。初期費用や月額費用などは必要なく、各社員に上限金額を設定することも可能だ。
リアルタイムに空席・空室状況や料金が確認できる(画像はテレスぺのWebサイトより)
企業にとっては、オフィス・在宅・サードプレイスオフィスをどのように組み合わせてコストカットと生産性向上の両方を実現させるかが課題になる。テレスぺなら各社員が利用したいエリアや業務内容に合わせてサードプレイスオフィスを選択することができ、また建て替えや経費精算の手間もかからない。
2. droppin(法人向け・個人向け)
ワークスペースの検索・予約サービス「droppin(ドロッピン)」は、法人向けと個人向け両方のサービスがあり、個人事業主やフリーランスもアプリから気軽に検索して予約することができる。
画像はdroppinのWebサイトより
対象エリアは全国の都心から住宅地まで幅広く、形態も提携しているカフェやコワーキングスペースをはじめ、主要駅に設置されているテレキューブ(テレカンブース)も対象となっている。
マップのピン止めからも探すことができる
画像はdroppinのWebサイトより
法人利用のメリットとしては、ワークスペースの種類や設備などでフィルタリングできる点が挙げられる。セキュリティ強度の高いサードプレイスオフィスでのテレワークが可能となり、機密性の高い情報を扱う業務でも安心だ。
社員の利用状況は専用の管理画面から常に確認できるため、テレワークの勤務管理にも役立つ。個人・法人ともに登録料や月額固定料金は無料で、予約時間から退出までの利用料を支払うシステムとなってる。
3. OFFICE PASS(法人向け・個人向け)
全国650カ所以上のシェアオフィス、コワーキングスペース、カラオケ個室などの空席状況をリアルタイムで確認して利用できる「OFFICE PASS(オフィスパス)」。株式会社日本経済新聞社が運営元ということもあり、大手企業の導入実績も豊富だ。
画像はOFFICE PASSのWebサイトより
個人プランと法人プランがあり、いずれも2種類の料金形態から選択できる。個人プランでは、利用回数に上限があり低価格な「ベーシックプラン」と、定額制の「プレミアムプラン」が用意されている。
法人プランは「回数課金プラン(回数券)」と「定額使い放題プラン(契約人数ごとに定額)」から選択可能。組織内で回数券をシェアしたい企業や、月ごとに利用の増減がありそうな企業は回数課金プランがよいだろう。
法人向けプランは回数課金と定額制から選択可能(画像はOFFICE PASSのWebサイトより)
いずれも事前予約は不要で、空席状況をOFFICE PASSのWebサイトで確認し、直接加盟店に行って二次元コードを提示するだけで利用できる。
4. TeamPlace(法人向け・個人向け)
場所・人・コトから全国700ヵ所以上のワークプレイス(コワーキングスペース、コミュニティスペース、シェアオフィスなど)が検索できる「TeamPlace(チームプレイス)」。同サービスの特徴は、全国に点在する魅力的なワークプレイス、ユーザー、イベントなどをマッチングするところだ。
画像はTeamPlaceのWebサイトより
「価値観」検索があり、自分の価値観やニーズから場所やつながりたいユーザーを検索することができる。「TeamPlace」の名称にある通り、同サービスを通じて生まれたつながりが、ユーザーにとってのTeamとなり、新しいプロジェクトやコラボレーション創出のきっかけとなることを狙ったものだ。
「職種・強み」「価値観」「趣味・好きなこと」から検索をかけ、つながりたいユーザーを探すことができる(画像はTeamPlaceのWebサイトより)
個人プランとして、全国のワークプレイスをサブスクリプションで月10時間から利用できる「AnyWhereパス」と、地域内の複数のワークプレイスをスポットで利用できる「TeamPlaceエリアパス」がある。法人プランは、コーディネーターが従業員の居住地や活動エリアに合わせて利用できるワークプレイスをアレンジして提案してくれる。
異業種との情報交換やコラボレーション、新たな学びや刺激を得たい人におすすめのサービスだ。
5. JUST FIT OFFICE(法人向け・個人向け)
「JUST FIT OFFICE(ジャストフィットオフィス)」は、日本全国のシェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペース、バーチャルオフィスから“条件に合うオフィスを探す”ことに特化した検索サービスである。エリア、利用人数、スペースのタイプを選んで検索でき、細かい条件から希望に合ったオフィスを探し出せるところが特徴だ。
画像はJUST FIT OFFICEのWebサイトより
各オフィスのページには、外観や室内の写真が豊富に掲載されている。また、月額費用や使用可能な設備、セキュリティなどの詳細情報がまとめられているため、比較検討がしやすい。気になるオフィスがあれば、同サイトの問い合わせフォームから内覧希望の連絡なども直接行える。
写真が豊富に掲載されており雰囲気をイメージしやすい(画像はJUST FIT OFFICEのWebサイトより)
5名以上の企業であれば、専任コンシェルジュが希望の条件に当てはまるオフィスを提案してくれるサービスもある。サテライトオフィスを導入したい企業や、家の近くにサードプレイスオフィスを確保したいワーカーにとって、オフィス探しにかかる時間と手間を大幅に削減してくれる検索サイトだ。
今後の働き方やオフィス戦略の一手に
リモートワークの普及に伴い、サードプレイスオフィスとして利用できる施設が全国的に増加している。かつてはフリーランスやベンチャー企業などの小規模事業者が利用するものというイメージがあったが、最近では大手企業の導入も進んでいる。
サードプレイスオフィスの活用は、移動時間の短縮やワークライフバランスの充実、異業種交流などワーカーにとって多くのメリットがある。また企業にとっても、オフィスコストの削減や災害時のBCP(事業継続計画)対策、社員のメンタルヘルス向上や離職防止など数々の利点がある。今後の働き方やオフィス戦略を考える際に、サードプレイスオフィスの活用を検討してみてはいかがだろうか。