採用活動や企業PRに!「オフィスツアー」導入企業の最新事例
企業のオフィスの様子を紹介する「オフィスツアー」。オンラインとオフラインそれぞれに特徴的な取り組みが展開されているオフィスツアーについて最新事例を紹介する。
Culture
オフィスツアーとは何か
企業のオフィス環境について社外に紹介する取り組みを指す「オフィスツアー」。企業イメージの向上や広報につながる手段として注目されている。学生や就職活動者にとっては、企業の雰囲気を入社前に把握できるというメリットがある。
オフィスは企業風土を体現するもののひとつだ。空間はもちろん、社員が働いている様子からも、言葉での説明だけではわからない、企業の雰囲気が直感的に伝わる。採用におけるミスマッチを防ぐという点においても、オフィスツアーが果たす役割は大きいだろう。
また、顧客に向けてサービスや設備の魅力を伝えるために、商談用のオフィスツアーを導入する企業もある。なかでも、実際に社員が自社商品を使用して勤務している現場を見せるショールームタイプのものは「ライブオフィス」と呼ばれている。
その他、オフィス環境の向上をめざす経営者や総務部門担当者にとってオフィスツアーは、他社の事例を知ることで、理想のオフィス像を思い描くヒントを得る機会にもなっている。
オフィスツアーに求められること
オフィスツアーには、オンラインとオフラインのものがあり、前者は「バーチャルオフィスツアー」ともいわれる。コロナ禍の影響から、現在の主体はオンラインとなっており、企業のWebサイト上に専用のコーナーを設け、オフィスの状況を画像や動画で紹介するケースが多い。
まさに「ツアー(周遊)」の言葉の通り、オフィスの入口から始まり、職務スペース、会議室や休憩室の様子まで、ワークスペースのさまざまな場所を巡るようにしながら、それぞれの役割についてビジュアルやテキストを使って伝えられている。
一方、オフラインのオフィスツアーは、担当者が付いてオフィスを案内するものが主だ。企業・ゲスト双方にとって来社することは物理的なコストであるが、社員とゲストとが直接コミュニケーションをとれる好機ともいえる。
あわせてオフラインのオフィスツアーでは、一般社員とゲストとが関わる交流会がセッティングされることも多い。社員とゲストの双方向のコミュニケーションを可能にしたり、企業のよりリアルな魅力を届けたりできる施策だ。
ゲストの視点に立った場合、オフィスツアーに求められるのは“リアルさ”かもしれない。企業が主催するオフィスツアーでは動画活用が進んでおり、スタイリッシュなものも多く見られる。しかし、就活生および直近1年以内の転職経験者を対象とした調査において、回答者の約7割が「かっこよさ」よりも「身近さ」のある動画に志望度が高まると回答していた。
画像は株式会社moovyのプレスリリースより
オンラインのオフィスツアーを企画する際は、自社の魅力や雰囲気を効果的に伝えることは当然であるが、現実と乖離がないように設計することも重要である。
オフィスツアー導入企業の最新事例5選
ここからは、オンラインとオフラインに分けて、オフィスツアーを導入している企業の最新事例について、それぞれの特徴を紹介したい。
【オンライン】
1. 画像と動画を効果的に使い分けた「Sansan株式会社」
Sansanは、法人向け名刺管理サービス市場でシェア82%を誇る、急成長中のSaaS企業だ。同社がWebサイト上で展開するオフィスツアーは、画像と動画をうまく使い分けながら、効果的にオフィスの様子を伝えている。
画像については、過去のコラム記事のアーカイブを活用して、数多くの職場風景を提示。読みやすく親しみやすい文体のキャプションとともに、テンポ良く、オフィス空間はもちろん、同社のAI研究者やエンジニアが働く京都の「Sansan Innovation Lab」など、本社以外の拠点やサテライトオフィスまで幅広く紹介している。
画像はSansan株式会社のWebサイトより
一方の動画は、同社で働くメンバーたちがオフィスで働く姿をおさめたドキュメンタリー作品になっている。各メンバーの事業にかける想いを映像にのせており、画像コンテンツと比べて、よりエモーショナルな印象を受けるが、登場するのが実際の社員というだけあって、急成長中の同社の勢いがリアルに感じられる内容となっている。
2. 社員が英語でオフィスをバーチャルガイドする「ランスタッドジャパン」
1960年にオランダで設立されたランスタッド社は、世界39の国と地域に4400以上の拠点を置く、世界最大級の人材サービス企業だ。その日本法人・ランスタッドジャパンでは、東京本社オフィスのバーチャルオフィスツアーをYouTubeチャンネルで公開している。
同社のプロフェッショナル(人材紹介)事業部の社員がオフィスを巡りながら紹介する内容で、実際に案内してもらっている感覚が味わえる。オフィスの間取り図に沿って、それぞれの空間について説明がされる構成で、そこで働く社員にも声をかけて話を聞いているため、オフィスの全体像や雰囲気をつかみやすい。
画像はランスタッドジャパンのWebサイトより
動画の最後にはCEOが登場して話をする構成となっているが、あくまでオフィスツアーの延長線上で登場するため、親近感をもってメッセージを受け取ることができる。また、全編を通して日本語字幕付きの英語でツアーが進むところも特徴的だ。グローバル企業として国際色豊かな環境で働けることのPRになっている。
3. VRにも対応し、臨場感あるオフィス見学が可能「NTT都市開発株式会社」
総合不動産会社のNTT都市開発は、Webサイトに「パノラマオフィスツアー」の特設ページを開設。11のオフィスビルについて、高画質のパノラマ写真を用いた360度バーチャル体験を提供している。
画像はNTT都市開発株式会社のWebサイトより
ユーザーが縦、横、斜めにマウスをドラッグすることで、見たい視点にスクロールでき、施設内を自由に散策するような気分が味わえる。VRにも対応しており、スマートフォンでサイトにアクセスしVRグラスにセットすると、現地に訪れたような臨場感ある体験ができる。
一部に執務室が見られるビルもあるが、基本的には外観やエントランス、エレベーターホール等が中心となっている。都心にそびえるオフィスビルのダイナミックさが伝わる仕様で、初めてビルを訪れる際に、事前にアクセスを確認をするときにも有用だ。
【オフライン】
4. ツアーでロイヤルカスタマーとの交流の機会をつくる「株式会社クラダシ」
クラダシは、フードロス削減を推進する社会貢献型ショッピングサイト「Kuradashi」を運営する、いわゆるソーシャルグッドカンパニーだ。同社は、Kuradashiの利用者の中から一緒にフードロス削減の輪を広げてくれる仲間をアンバサダーとして認定し、オフィスツアーに招待している。
画像は株式会社クラダシのnoteより
同ツアーは、代表の挨拶にはじまり、各メンバーの仕事内容の紹介、参加者の自己紹介、オフィスツアー、豪華商品プレゼント付きのクイズ大会、商品試食会や撮影会など、多彩なコンテンツで構成されており、社員と参加者の双方向のコミュニケーションが行える内容となっている。
それにより同ツアーは、参加者がどのようにサービスを利用しているかという実態把握になるとともに、サービスに対する意見や要望を聞く場としても機能している。オンラインで完結するサービスを提供する同社にとって、ユーザーの声を直接聞く貴重な機会になっているようだ。
5. ステークホルダーの関係性をツアーで強化する「株式会社アステリア」
アステリアは、企業向けのソフトウェアを開発・販売しているIT企業だ。同社は2022年6月、東京本社で「第1回スマートオフィスツアー」を開催した。同社が手がけるデータ連携ツール「ASTERIA Warp」のユーザーを対象に、アステリア製品を駆使して構成したスマートオフィスの見学機会を提供したものだ。
画像は株式会社アステリアのWebサイトより
同オフィスは、入口のカメラでAIを利用して来場者を判別したり、会議ブースの空き状況を外出先から確認できたりと、社員がオフィスを利用するうえで便利な仕掛けがたくさんなされている。そうした仕掛けの一部を、社員の案内で参加者にひと通り紹介した後、オフラインの懇親会が設けられ、情報交換が行われた。
BtoB事業を手がける同社の顧客は企業であり、なかでも担当者は専門的な見識の高い社員が担う場合が多い。そのためユーザーをオフィスに招くことは、製品のPRになるだけでなく、ステークホルダーとの関係性の強化や彼らの知見を学ぶことにもつながっている。
オフィスツアーは自社の魅力を発信する新たなツール
企業のイメージ向上や採用活動はもちろん、ロイヤルカスタマーとの交流やステークホルダーとの関係性強化など、さまざまな効果が見込めるオフィスツアー。今後も、オンラインとオフラインそれぞれのメリットを生かしたツアーが多く実施されていくだろう。自社の魅力を発信する新たなツールとして、オフィスツアーの開催を選択肢に入れてみてはいかがだろうか。