ダイソンが開発したサーカディアンリズム対応のタスクライト Dyson Lightcycle
昨年2018年10月に発売を開始したサーカディアン照明。サイクロン式掃除機の代名詞であるダイソンが手掛けたタスクライト「Dyson Lightcycle」を紹介する。
Facility
今回ご紹介するのは昨年2018年9月に発表、10月に発売を開始したサーカディアン照明の1つ。サイクロン式掃除機の代名詞であるダイソン(英語: Dyson Limited)が手掛けたタスクライト「Dyson Lightcycle(ダイソン ライトサイクル)」だ。ダイソンは初めてサイクロン式掃除機を開発・製造した会社として知られるが、それ以外にも電気機器メーカーとして扇風機「Air Multiplier」や超音波式加湿器「Dyson Hygienic Mist」などを世に送り出している。そんなダイソンが開発したタスクライトとなれば、興味をそそられないわけがない。業務に支障を及ぼす生体リズムの崩れにも触れながら実際の使用感と共にお伝えしていこうと思う。
突然訪れる猛烈な睡魔
作業中に訪れる強い眠気。この様な症状を度々感じることがあるとしたら、あなたの体は地球のリズムと一致していない可能性がある。
誰もが一度は経験したことがあるかと思うが、これは恒常性維持機構というただ疲労からくるものもあれば、生体時計機構という朝だから起きて夜だから寝るという体内時計の崩れからくるものがあると言われている。業務中の眠気も単に疲れが原因であれば体をしっかり休めることで改善が可能だ。しかしもしそうではなく、本来夜だから眠くなるはずの体のリズムが、何かしらによって崩れてしまっていることが原因だとすれば、カフェインで目を覚ますといった一時的な解決策で片付けてはいけない問題なのである。
そもそも眠気が仕事の効率に対する影響はどの程度のものなのか?それはすでに研究結果で露わになっている。株式会社ニューロスペースは、三菱地所株式会社と共同で実施した、仮眠室を活用した仮眠効果検証実験の結果で、日中(業務中)に眠気や集中力の低下を90%以上の人が実感し、眠気の業務への影響として大きい点は、「業務の質の低下」「業務効率の低下」(80%前後)であると発表した。眠気は特定の人だけの問題ではなく、私たちの多くに共通して効率性に悪影響を及ぼすものなのである。これだけの割合の人間が眠気で一時的な効率低下を引き起こすのはどの企業でもかなり深刻な問題のはずだ。
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実は、体内時計の崩れは私たちの身の回りにある「光」が大きく影響している。
ハーバード大学が調査したブルーライトの影響
体内時計が崩れて睡眠に影響を与えることを概日リズム睡眠障害というが、それを引き起こす一般的な原因としては時差ボケや不規則な時間での勤務などがあげられる。しかし近年懸念されているのがスマートフォンやパソコンの利用によるブルーライトの影響だ。
ハーバード大学による、12名を対象とした2週間の調査では、夜に”タブレット端末で読書する群”と”紙媒体で読書する群”の2群を比較した結果、睡眠に必要とされるホルモンのメラトニン分泌量が、タブレット端末群の方が優位に抑制され、また分泌されるタイミングも、紙媒体群より遅くなったと発表されている。つまり、夜にブルーライトの光を目で感知すると、私たちの体が昼間だと勘違いして睡眠促進ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制してしまい、結果として夜決まった時間に寝られなくなる、という仕組みのようだ。
今日私たちの生活はブルーライトを発するデバイスで溢れているが、もしあなたが業務時間中の眠気に悩んでいるのであれば、概日リズムに着目しブルーライトとの付き合い方を改める必要がある。
サーカディアンリズムとは
このように長時間ディスプレイと向き合うことが健康を害するのではないかと懸念されるなかで、注目されているのがサーカディアンリズムに対応した照明器具だ。サーカディアンリズムとは前述した概日リズムの英訳(circadian rhythm)。健康的なオフィスの新基準として世界的に注目されるWELL認証でも、7つの評価項目のうちのひとつである「光」の中でサーカディアン照明デザインを必須項目として定めている。このサーカディアン照明が徐々に注目を集めるようになる中、高まるニーズに対応するために各照明器具メーカーも現在製品の開発に力を入れている。
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組み立ては簡単!スマホとの連動でパーソナライズ化も可能
まず、梱包を開けるとシンプルな組み立て方の説明イラストが描かれている。円形のベースは重みがあり安定感を感じさせる。その一方スタンドを含めた可動部分は程よい軽さだ。部品の数は少なくイラスト通りに作業を行えば2〜3分で工具を使わずに組み立てができる。
梱包の中には説明書も入っているので、操作方法はそちらで確認ができる
サーカディアンリズムへ対応した照明はその時間帯によって色温度が自動的に調整されるものが多い。Dyson Lightcycleはさらに独自の自然光アルゴリズムにより、専用アプリケーションに自身のプロフィールを設定することで、時間だけではなくその利用場所の自然光を再現できる。屋内にいても人間が本来生活をしていた自然光のサイクルの下で作業ができ、体内リズムを整える助けになる。
下の画像は先端のライト部分に近い位置に設けられた照明器具の操作部分。左側のオレンジ丸印とブルー丸印の間を指でなぞることで、色温度をリラックスできる暖色(オレンジの光)の2,700ケルビンから寒色(白い光)の6,500ケルビンで手動調整が可能だ。また右側の白丸印とグレー丸印の間を同じようになぞると、100ルクス〜1,000ルクスの明暗調整ができる。LED設置部分の上部に位置するスイッチボタンに触れるとオン/オフとなる。
下部には赤外線センサー・アンビエント光センサーに加え、3つのスイッチがある。スイッチは左から、①照度(明暗)の自動調節、②人感センサーのオン/オフ、③サーカディアンリズムに応じた色温度自動調節のオン/オフとなっている。人感センサーは赤外線により、人などの動きが2分間検知されなければ減光し、さらに10秒後に完全に消灯するようになっている。ついつい電源を切るのを忘れがちな人や、入切りを手間に感じる人にとっては便利な機能だろう。またオフィスでの利用を考えると企業としては省エネでランニングコストも最小限に抑えることができる。
人工衛星でも使われている熱伝導性に優れた銅管を利用したヒートパイプテクノロジーによって、LEDから熱を瞬時に放出し、熱によるLEDの劣化を防ぐ。その結果LEDの寿命が最大で181,000時間まで持続。
位置調整は3 Axis Glide™ (スリーアクシスグライド)モーションにより、水平・垂直・360°回転ができ、照射したいところに向けて自在に動かせる。またスタンドにはUSB-Cの差し込み口があり、タスクライト用に取られてしまうコンセントの代わりとして、より手元に近い位置でデバイスの充電が可能となっている。
また前述した専用アプリケーションでも照度や色温度の操作ができる他、さらには「リラックス」や「集中」などの精神状態や、「読書」や「勉強」など活動シーンごとに、自身で照明設定をカスタマイズして登録することができる。
使ってみた感想まとめ
室内全体を一様な明るさにする全般照明の場合、その空間で行われるそれぞれの作業内容や、各利用者の年齢に合った光を選ぶ事が出来ず、明るすぎたり暗すぎたりしてしまうことがある。実際、日本のオフィスは契約時点で天井に照明器具が設置されていることが多いため、新たに照明器具を追加することが少ない。そのため使ってみてから場所に応じて明るい、暗いなどを初めて体感することがある。その点、あとからでも自身の必要な明るさに調整できるところは非常に嬉しい。職種的な観点になるが、色や素材のサンプルを見る場合に、想定しているシチュエーションに応じた色温度や照度に変えて確認できるのは非常に便利だと感じた。
また筆者自身忘れがちなところもあるが、電源のオンオフを気にしないで利用できるのは、オフィスの運用視点、個人の操作手間、両方とってもストレスがないと言える。
サーカディアンリズム対応による睡眠障害への効果は短期間で測れるものでないため、その効果をこちらでお伝えすることは難しい。ただし持ち運びができるというところで、個人的にはオフィスの移転や改修にも対応がしやすいタスクライトについては推進派なうえに、長寿命とパーソナライズ化を実現したDyson Lightcycleは、睡眠障害への効果を抜きにしても導入検討する価値のある製品だ。
一点、次の開発への期待を込めて述べると、フリーアドレスやABW導入の企業が増えている中で、毎日自分が座る席にタスクライトも一緒に持ち運びながら移動することは難しい。