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それぞれのオフィス論から考える「なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?」【ICCサミットKYOTO 2018レポート#5】

9月3〜6日に開催されたICCサミット KYOTO 2018。「それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』」のセッションレポートです。

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ICCサミット KYOTO 2018の開催レポシリーズ、5回目は初日最後のセッション「それぞれのオフィス論から考える『なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?』」レポートです。それに先立ち、5社のオフィスの訪問記事も公開していますので、合わせてぜひご覧ください。

ICCサミットは「ともに学び、ともに産業を創る。」ための場です。毎回200名以上が登壇し、総勢800名以上が参加する。そして参加者同士が朝から晩まで真剣に議論し、学び合うエクストリーム・カンファレンスです。次回 ICCサミット FUKUOKA 2019は2019年2月18-21日 福岡開催を予定しております。参加登録は公式ページをご覧ください。

オフィスレポート完結編はパネルディスカッション

初日F会場の最後のセッションは、それぞれのオフィス論から考える「なぜ今の時代にオフィスが必要なのか?」。このセッションのために、ICC編集チームは事前に5社のオフィスを訪ね、見学して解説をいただき、それをレポートにまとめていた。

【5社のオフィスレポート】
創業の地・銀座、都内最大のワンフロア面積で実現した、社員の“エンゲージメント”を高めるリンクアンドモチベーションのオフィス戦略
働き方、仕事内容、チーム単位に合わせてカスタマイズ。急拡大を続けるビズリーチを支えるフレキシブルなオフィス
制度・設備が一体となった最先端オフィス! 日本マイクロソフトが推進するワークプレイスの「働き方改革」
オフィスを“自分ごと”にして、創業6年間平均190%成長!「生きる」と「働く」の境界線をあいまいにするCRAZYの試み
外に正解は求めない!成長する自分たちを表現するプレイドのGINZA SIX、未完成のオフィス

偶然に取材日が重なって同じ日に3社を訪問することがあり、続けて見るからこそ、各社のオフィスへの考え方、工夫した点などの違いや、共通点などがわかって非常に興味深かったのだが、この日のセッションではそのうち4社が一同に会し、自分たちの組織について、オフィスとは何かを語り合った。(※プレイド倉橋健太さんはこの日、台風により交通手段がストップしたため欠席)

モデレーターはビズリーチの竹内 真さん。そのオフィス訪問の記事をモニターに映しながら、ディスカッションが始まった。

ビズリーチ 取締役 CTO 兼CPO 竹内 真氏

「オフィスについてディスカッションするのは、ICCサミットでは珍しい企画かと思います。でもオフィスは、会社の文化や哲学に根ざしたもので、重要ですよね」

そして各レポートを紹介しながら、4階建ての元工場を社員の手でフルリノベーションしたCRAZYの小守由希子さんに、その経験から得たものを聞く。

小守さん「会社を自分たちで創っていく感覚を大事にしているのですが、当時、セクショナリズムが進んできて、自分たちで会社を作ってる感覚がだんだん持ちにくくなっていました。でも全員でリノベーションをしたことで、一緒に何でも創っていけるという確信が持てるようになりました」

CRAZY カルチャーオフィサー 小守由希子氏

M&A10社のオフィスをワンフロアにまとめた理由

CRAZYの社員85人のうち6割が女性で、小さい子供を持つ社員の声から生まれた託児所には、社員が仕事の合間にリフレッシュしようと訪れていることや、社食では出社している社員全員で毎日ランチをとることを興味深げな顔で聞いていたリンクアンドモチベーションの麻野耕司さんが、オフィスが銀座の一等地に、1850坪ワンフロアの理由を語る。

「弊社にとって成長戦略で大事なのはM&Aです。10社重ねて本体は300人、全体では1300人になりました。オフィスもそれぞれに点在していたのですが、M&Aのシナジーを効かせるためには、ワンフロアがいいのではないかと考えました。コンサルティング、投資、クラウドとだいたい3業種ありますが、私が三分の一しか見ていないという感じをなくしたいというのもあります」

リンクアンドモチベーション 取締役 麻野耕司氏

麻野さんによると、オフィス戦略は経営戦略に近く、働く人のエンゲージメントはコミュニケーションで決まる。そのコミュニケーションはオフィスに影響を受けるものだという。

「ただ、立派なオフィスに来てしまうと、豪華客船に乗った気になってしまう。だから、エントランスに地図を置き、現在地点と我々が始まった場所を記しています。以前汐留タワーにオフィスがあった時期もありましたが、リーマンショックで撤退しています。『今はGINZA SIXにいても、経営が悪くなったら移転する』と、歴史を必ず語るようにしていますね」

モデレーターの竹内さんもそれに大きくうなずいている。ビズリーチにも社史を綴ったパワーポイント資料があり、それを伝えることを大切にしているそうだ。

リモートワーク管理の鍵になるものとは

4社のなかで異色なのは、日本マイクロソフト。徹底的にリモートを推し進め、移転前の新宿オフィスとはまったく違う未来的なオフィスを品川に創り上げた。伊藤かつらさんが語る。

「社員はすでに新宿を中心に人生設計をしていたので、移転するときは非常に文句が出ました。3年前に社長が変わったときに、社員のエンパワーメントに、さらに比重を置いてオフィスを考えるようになりました。オフィスと同時に働き方の制度も大きく見直しました」

日本マイクロソフト 執行役員 常務 デジタルトランスフォーメーション事業本部長 伊藤かつら氏

震災を機に、オフィスに来なくても仕事ができることに気づいた社員も多かったという。時間ではなくパフォーマンスベースでの管理へのシフトは、マネジメント力にもかかっているとのこと。

伊藤さん「アメリカのマイクロソフトは、自分の部下が世界のあちこちにいることが当たり前だったりします。とはいえ、仕事は人間と人間でやること。デジタルで解決できる限界はあると思いますね。むしろ数少ないFace to faceをより重視している気がします」

麻野さん「デジタルの進化は素晴らしいと思います。ただ、組織は自由軸と統合軸の両軸が大事です。日本人は会社への依存度が高いので、よほど強い理念で束ねていないと、バラバラになってパフォーマンスが下がってしまいがちです」

目指すのは、労働時間の無駄を減らしていかにパフォーマンスを上げ、かつ組織へのエンゲージメントを高めていくかということ。それを各社が模索してオフィスや制度を創っているが、印象的だったのは、登壇企業中で最大規模の日本マイクロソフトの伊藤さんが、最小規模のCRAZYの理念に共感し、実感を込めて言ったこの言葉だった。

伊藤さん「弊社もパタ二ティ休暇(男性社員のための育児休暇)などを推進していますが、やはり、仕事と人生がばらばらだとだめですよね」

パフォーマンスが上がるオフィスとは

ディスカッションの終了後、このセッションをスポンサーしたフロンティアコンサルティングの佐々木真志さんに感想をうかがった。

「オフィス創りに関わる身として、さまざまな例やお話を聞くことができて非常に面白かったです。オフィスは経営戦略であり、その話を起点に、組織作りや、リモートワークに関するところなど、個人的には非常に考えさせられる意見を聞くこともできました。次回もぜひ、シーズン2ができればと思います!」

事前の取材と、このセッションを通じて見えたオフィスとは、管理しやすいオフィスでも、デザインだけが優れたオフィスでもなく、活発なコミュニケーションを促し、事業に合った形への流動性があり、人が主役となれる場としてのオフィスで、それが整うとパフォーマンスが上がるということだった。そしてそれは経営戦略の数だけバリエーションがある。

いまやオフィスは一度創ったら完成ではない。時代や業態、働き方によって変わるだろうし、事業や組織のフェーズによっても変わってくるのだろう。オフィスという装置から見る経営戦略もまた、企業の一貫性を見る上で重要なのではと考えさせられるセッションだった。

※本記事は ICCサミット 公式ページより転載しております。

この記事を書いた人:ICCパートナーズ編集チーム

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