Googleのニューヨーク拠点、1930年代の鉄道ターミナル跡地にオープン
スマートでスタイリッシュかつサステナブル――。Googleは、米ニューヨークにある空中庭園「ハイライン」をまたいで建つセントジョンズ・ターミナルに、新オフィスを開設した。この巨大IT企業が、既存の建築物を新たな目的や用途に適応させる手法「アダプティブ・リユース*」の世界に踏み出したことを印象づけている。
Facility, Design
Googleは、1930年代から使用されていた鉄道ターミナルの上に建つ新しいビルに、ニューヨークオフィスを開設した。もともと鉄道の終着駅だったこのターミナルは廃線後の現在、空中庭園「ハイライン」の一部として活用されている。
このオフィスビル「セントジョンズ・ターミナル」は、北側ファサードに鉄道の軌道の一部(道床)がそのまま残されている一方、サステナブルなデザインと革新的なワークスペースは、しっかりと未来を見据えた造りになっている。設計はCook Fox Architectsがコアとシェル部分を担当し、内部アーキテクチャーの設計はGenslerが行った。開発を手掛けたのは、Oxford Propertiesだ。
- * 歴史的な建築物を保存するだけでなく、現代社会に「適合(アダプティブ)」させて「再利用(リユース)」すること。環境負荷が少なく、サステナビリティにも通じる考え方。「空間のアップサイクル」とも言われる。
チームファーストのアプローチ
Googleは自らが行った調査から、イノベーションは少人数かつ緊密なチームワークから生まれることに気づいた。その洞察が、今回の新オフィス計画に「チームファースト」のアプローチをもたらしたという。このオフィスビルで採用されている「共有ネイバーフッド席(Shared neighborhood seat)」というモデルには、より高いレベルの社会的つながりとチームの結束力を促進する効果があることが、以前の試験導入の際に判明している。
ここでは、社員一人ひとりが自らのデスクを持つのではなく、チームごとに割り当てられたエリアを拠点とする。共有のネイバーフッドには、異なる種類の業務に対応できるよう、さまざまなデスクやミーティングルーム、電話用ブース、共用テーブルなどが用意されている。
各フロアにあるワークスペースは、12階分を結ぶ非常階段を囲むように配置されており、透明性と連結性を高めるデザインになっている。またCook Fox Architectsによれば、高性能フィルターによる換気とバイオダイナミックな照明器具が採用されている。
また、Googleは、他のオフィスからニューヨークに出張している社員も含めて誰もが仕事をできるようにさまざまな共用スペースを用意している。たとえば、各フロアにはワークラウンジが置かれ、カフェスペースをはじめ、テラス、マイクロキッチンなどもあり、すべて人間工学に基づいたソフトな座り心地の椅子、十分な広さの作業スペース、電源コンセントを備えている。
こうして異なる気分や行動、タスクにも対応できる、多様な仕事環境を混ぜ合わせたオフィスが完成した。にぎやかなコーヒーショップのようなスペースもあれば、リラックスできる屋外の庭や、川に臨む静かなライブラリーもある。いくつかのフロアは、来社したクライアントがGoogleのスタッフと密に連携を図りながら作業ができる専用スペースとなっており、イベントハブやカフェスペース、休憩室などが用意されている。
Googleの米州およびグローバルビジネス担当の責任者であるショーン・ダウニー氏は、新オフィスに関するブログのなかで歴史を意識したデザインについて、同社の各オフィスはその所在地域に「そびえたつ」のではなく「地域コミュニティを盛り上げる」ことを目指していると説明している。
ダウニー氏はこう話す。
「その方法のひとつが、たとえばピア57やチェルシーマーケットなどの歴史的建造物をオフィスに再利用することです。セントジョンズ・ターミナルのもともとの構造は新オフィスの基礎として利用されていますが、ヒューストン・ストリートに覆いかぶさっていた暗いトンネル部分は取り除き、近接のハドソン・スクエア地区とウォーターフロントとのつながりを復活させました。
既存の構造と基礎を適応させることで、新たに基礎構造をつくる場合と比較して、二酸化炭素当量排出量(CO2-eq)を約7万8,400t削減できることが見込まれます。これは、およそ1万7,000台の車を1年間、路上から排除するのに相当する量です」
緑化スペース
当ビルの緑化スペースとしては、地上階の1.5エーカー(6000㎡超)に及ぶ植栽や、道床を利用した庭、テラスなどがあり、地域の生態系にも貢献している。実際に、ビル外周の植栽に使用された植物の95%超が、地元ニューヨーク州原産とされるものだ。また、NYC Audubon(非営利の環境保護団体)との協力で実施している調査では、セントジョンズ・ターミナルにつくられた生息環境で、これまでに40種以上の鳥類が観察されている。
その他のサステナビリティーへの取り組みとして、ソーラーパネル、雨水利用設備の設置、ハリケーン・サンディが襲来したコニーアイランドにある板張りの遊歩道の材木の再利用などが行われた。大規模な駐輪場は、自転車通勤を奨励するためのものである。このプロジェクトは、最近の建築トレンドであるアダプティブ・リユース分野にGoogleが一歩踏み出すことを示している。また、広く報道されているように、同社が従業員のオフィス回帰に苦労していることを受けて策定した、個性的なオフィススペースに投資するという長期的戦略の一環でもある。
同ビルは、コアとシェル部分で環境性能認証「LEED v4 Platinum」を取得しており、その他のサステナビリティーや環境配慮に関する評価基準(green rating)の認証も目指しているという。
- 本記事は、WORKTECH Academy のコンテンツパートナーであるSALUS Global Knowledge Exchangeとの提携によるものです。
※本記事は、Worker’s Resortが提携しているWORKTECH ACADEMYの記事「Google New York opens neighbourhood office above 1930s rail terminal」を翻訳したものです。
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